所感:「エキスパート・スポンジ・マジック by ヴィクター・ノワール」
エキスパート・スポンジ・マジック by ヴィクター・ノワールとは?
スクリプト・マヌーヴァ社から日本語字幕版が出ているスポンジボールを使ったマジックのDVD。
Vitor Noir(ヴィクター・ノワール)氏はスペインのマジシャンのようで、2015年に来日していた。その際、演技を観ていたスクリプト・マヌーヴァ社の滝沢氏がヴィクター氏のマジックを気に入り、翻訳に至ったらしい(スクリプト・マヌーヴァHPコラム「新しい世界が、まだある」から)。
*PV内で演じているのは「インビジブル・ボール」という手順
所感
テクニック
収録内容は大まかに「テクニック」のパートと「手順」パートに分かれている。
「テクニック」のパートに収録されている技法は、マジックをやっている人には馴染みのある技法も多いと思うが、スポンジという素材を扱うため、コイン等の技法と比べると、方法に異なっている部分が見受けられる。
クラシックパームやフレンチドロップあたりが顕著に違いが出ていると思う。
すでにスポンジボールの手順を持っている人でも、初心者でもありがたい内容になっている。
- クラシック・パーム
- サム・パーム
- ダブル&トリプル・サム・パーム
- フィンガー・パーム
- クローズド・フィンガー・パーム
- オープン・フィンガー・パーム
- ビクトリアン・ピンチ
- バック・パーム
ここからはバニッシュ系
- オードリー・ウォルシュ・バニッシュ
- サード・フィンガー・ピンチ・バニッシュ
- 指先でのバニッシュ
- トンネル・バニッシュ
- フレンチドロップ
- ハンド・トゥ・ハンド・バニッシュ
- ショウオフ・バニッシュ
「テクニック」パートも後半になってくると、スポンジボール特有の技法が増えてくる。
すでに演じている手順がある人なら、容易に組み込めるアイディアが多数ある。
- ハンド・ウォッシュ
いわゆるワイプトクリーンである。 - ワンハンド・カラーチェンジ
名前通りである。非常に有用でビジュアル。 - グループから1個をスチール
基本は3個のボールを片手で示し、もう一方の手に握る際に1個をスチールする。観客に握ってもらう場合にも使用できる技法。 - インスタント・マルチプリケーション
玉を揉むとどんどん増えていく方法。特殊なホルダー等は使用しない。氏は大体10個程度出すそうな。
ここからはギミック・ギミック関連の技法になる
- ホルダー
氏の使っている2種類を解説。
1つは取るのも戻すのも容易なホルダーだが、主に軽いものに使うホルダー。
もう1つは戻すのはほぼ不可能な取る専用のホルダー、少し重めのものに使うホルダー。 - リバーシブル・スポンジ・ボール
ギミックの作成方法について。
ちょっと面倒だが、市販品として存在してない物も作れるようになるメリットは大きい。 - インスタント・チェンジ
ギミックを使ったチェンジ。
片手で瞬時に変わる。ギミックを使ったチェンジは、市販されている形状が変わるスポンジでも使用できる。 - フリクション・チェンジ
ギミックを使ったチェンジ。持った手からもう一方の手に握ってから変わる。 - ラウンド・ショウ
ギミックの全体を改める技法。
手順
オープニング
1個のボールが出現・消失・出現する手順。
今までの解説が嘘だったのかのように、突然エグい感じに難易度が上がる。
こいつ初心者を殺しに来たぞ、気をつけろ。
使用してる技法はこれまで解説されていたものばかりなのだが、ポンポンとポジションが入れ替わっていく。
習得できたら、初心者とは名乗れない。
ベンソン・ハット
3個の玉がテーブル上に伏せた帽子の中へ移動していき、最後にはすべて消失、帽子の中にはでかいスポンジが詰まっている。
いわゆるベンソン・ボウルのバリエーション。
セリフはなく、音楽に合わせて進行する。
テーブル上のマットと帽子の色が似ていて見えづらかったので、プレイヤーの明るさを調整してから観た。
再生環境次第では同じように明るさ調整をしたほうがいい人もいるかも知れない。
使うボールのサイズに制限はないが、氏が使用しているボールは40mm(1.5インチ)、クライマックスに出すものはボールと同じ色の物であれば良いといった感じ。
あと帽子も必要(中折れ帽であれば大抵問題はないと思う)。
最初に3個のボールが出現する箇所の解説で、「すでに解説した方法で出現させる」といっているがそんな解説を観た覚えはない(収録漏れとかなのかなぁ?)。
細部まで考えられており、シンプルながら良い手順である。
帽子を被る習慣がないのだが、あの帽子が欲しくなった。
アメージング・トラベル
パースフレームからボールの出現。
ボールの1つがシルクに変わり、シルクを「道」にして観客Aの手から観客Bの手へ移動していく。
出現・移動・変化・浮遊(玉が浮いて移動します)と、色々な現象が起きる大掛かりな長手順。
レギュラーのスポンジボール、パースフレームの他、色々と用具を作成する必要があるため、そのまま演じるのは中々に厳しいが応用の効きそうなアイディアが詰め込まれている。
パースフレームの中からボールを出現させるフェイズで行われている出現法はどれも興味深い。
ただ、一番最初に行われている「観客自身がパースフレームの中へ指を入れてボールを取り出す」という部分は、実際どの程度通用するのか気になるところ。
また、観客の手の上に置いたボールにシルクを被せ、ゾンビボールのように移動させるフェイズは、必要な準備が面倒なものの、それ単独でもいんじゃないかなー?と思うほどでした。
そういった現象をやりたい人は参考にすると良いと思います。
ディスペンズ
3色のボールを使った3段構成の交換現象。スポンジボールでやるCSB。
ボールとがま口の財布だけが必要な手順。
がま口財布は口を開けたときに3色のボールが並んで入っているのが見せれる程度、空間に余裕があったほうが良い。
氏が使っているがま口は、見た感じ横が8cm程度だと思う。
ボールのサイズに言及はないが、これまでと同じ40mm(1.5インチ)もののようだ。
3色のスポンジボールは見た目がはっきりしていて分かりやく、最低でも1個は常に観客の視界に入っているのも良い。
スポンジボールのカラーチェンジは映えますねぇ。
演技後、がま口にボールをしまうことで次のセッティングが完了させれるので、テーブルホッピング等で演じるのにも便利です(入れっぱなしにして、スポンジが色移りしないように注意ですかね)。
これは手順ではなく解説での難点なのだが、クライマックスで行われている入れ替わりの解説時に「テクニックのコーナーで解説したように」とあるがこれに見覚えはない。
ベンソン・ハットのところの3個の出現と大体同じ動きのため、やはり収録漏れなのであろうか。
すでに解説した体で行われるざっくりした解説ではあるが、完全に説明を飛ばすというわけではないので理解できないことはないが少し残念であった。
ホフジンザー・スポンジ
トランプのスートスポンジ4種とスポンジボール9つを使う。
4種のスポンジを離して置き、クラブ・ダイヤ・ハートのスポンジの元には3個のボールをそれぞれ置く。
スペードのスポンジを握ると、クラブ・ダイヤ・ハートのスポンジが集まってくる。
ものすっごい数のスポンジが散らばっている、非常に画面がうるさい手順。
セットに必要なものも見た目よりもさらに多く、ギミックもある程度作成しなくてはいけない。
対マニア向けの手順といったところ。
インビジブル・ボール
3個のボールと観客の手を使ったスポンジ版オープントラベラーズ。
使用するのはレギュラーのみ。
色とサイズは不問で、使用するボールの色が全部異なっていても問題ない。
ただそのまま演じるには角度が厳しく、演者・観客がともに立っている状態で、数人を相手に見せるのが精一杯になりそう。
3度行われる移動は、どれも面白いので他の手順に落とし込んでいくのが良いでしょうかね。
最後に
スポンジボールを使ったマジックの基本技法についてここまで詳細に解説した資料は今まであまりな、スポンジボールをしっかりと学びたい人にはおすすめの資料であった。
初心者がこのDVDから始めるもの良いかと序盤は思ったが、基本のテクニックと収録手順を比較すると難易度が途中で急激に上がっているため、基礎は身に付くけど手順が覚えれない、という状況に陥りそうかなと感じた。
スポンジマジックを始めたい人が居たら、このDVDと初級・中級くらいのスポンジマジック手順が収録されている資料を渡せば、それは良いスポンジマジックを演じれるようになるのではないかと思いました。