所感:「Fractalicious by John Bannon/Liam Montier」
Fractalicious by John Bannon/Liam Montierとは?
John Bannon(ジョン・バノン)氏とLiam Montier(リアム・モンティエ)氏の2大マジック・クリエイターのコラボDVD。
収録されているのはほとんどがフラクタル・マジック。
収録のパケット・トリックに使用するカード付き。
所感
- 付属のカードはノンギミック。
- 付属カードは「BRAINIAC」「SHORT ATTENTION SPIN」「SPIN DOCTOR」「SELF ASSEMBLY」で使用できる
- 「BRAINIAC」「SHORT ATTENTION SPIN」「SPIN DOCTOR」は同じカード構成。
THE ELMSLEY COUNT
もはや言わずと知れたエルムズレイ・カウントの解説。
THE BULLET PARTY COUNT
ジョン・バノン氏の技法で、エルムズレイ・カウントのバリエーション。
両面を改めるエルムズレイ・カウント。
同じ趣向の技法にタウンゼント・カウントがある。
マイナーな技法(だと思う)だが、日本では佐藤喜義(さとうきよし)氏がその有用性を再発見・普及に貢献したと思っている。
バレット・パーティー・カウントが気にいる人は、タウンゼント・カウントもおそらく気にいると思うので、喜義氏の作品に触れてみるといいんじゃないかなと(多分、どの作品集を買っても大体出てくると思う)。
BRAINIAC
4枚のエースを取り出す。
観客が選んだマークのエースだけが表向きになる。
他のエースを見てみるとすべてブランクカード。
さらに、もし他のエースが選ばれていたら?という疑問に答えるように他のエースが現れ、エースを裏返すと模様がすべて異なっている。
Max Maven(マックス・メイヴィン)氏の名作「B’Wave」にクライマックスをさらに追加したバージョン。
付属のカードだけで演じることが可能。
コテコテのパケット・トリック・マニアにはウケそうである。
私的には原案である「B’Wave」と比較すると月とすっぽんくらいの差があると思っているため、演じることは天地がひっくり返ったとしても来ないと思う。
MONTINATOR 5.0
裏に表面のカード名がでかでかとマーキングされた3枚のジョーカーと1枚のクイーンを使ったモンテと見せかけた、すべてのカードがクイーンに変化するトリック。
Jack Parker(ジャック・パーカー)氏の「Visual Acuity」(書籍『52 Memories』収録)が元になっている作品なのだとか。
似た現象だとJosé Carroll(ホセ・キャロル)氏の書籍『52 Lovers』(日本語訳:岡田浩之)に収録されている「The Unwary Cheater;orThe Nine Card Monte」や、Juan Marcos氏のギミック付きDVD『Hustle』、Max Maven氏の「Inside out」なんかを思い出す。
完成度的にはクイック3ウェイと言ったほうが良いかもしんない。
クライマックスのインパクトは素晴らしいのだが、カウントでしか初期状態を見せれないのが辛い。
観客側にマジック慣れしている人特有の先入観を求めてる感がある。
発展型としてLiam Montier氏が「The Full Monty」という作品を発表しているのだが、そちらはこの作品でわたしが弱いと思った箇所が見事に解決されていました。
CHOP SHOP
3枚のジョーカーと1枚のクイーンを見せ、観客にバレないようにクイーンを移動させると宣言する。
クイーンを抜き出してポケットに仕舞うが、気づくとパケットの中に戻ってきている。
何度か繰り返した後、クイーンではなく突然エースがクイーンの代わりに戻ってきており、ジョーカーだったはずのカードもすべてエースになっている。
ホーミング・カード(帰ってくる方の)にクライマックスを付加したような手順。
Cameron Francis(キャメロン・フランシス)氏の「Chop the monte」がベースになった手順だとか。
分かりやすい現象と思いがけないインパクトのあるクライマックスから、気に入る人は多いと思う。
カウントの繰り返しに耐えられる人であればおすすめ。
初期状態のディスプレイをもう少し改善出来れば、パケット・トリック特有のカウントの多さに正当性を与えれると思うんですけども。
SHORT ATTENTION SPIN
3枚のブランクカードと1枚のエースからなる4枚のパケットを見せ、観察力のテストをするがことごとくはずれ、エースが消えたり、エースが印刷されたり、裏面が変わったりする。
基本的には「BRAINIAC」のマイナーチェンジ。
質問の仕方で実際に起こっている現象よりも、多くの現象を起こしたかのように感じさようとする試みは評価する。
「BRAINIAC」よりはこちらの方が手品的に潔くて良い気がする。
BOX OF DOOM
2組のデックを使った予言のトリック。
「overkill」のバノン版ともいうべきトリック。
2デックを使うことで数理的な操作感が上手いこと消えている。
2デックのうち、観客が操作するデックは即席で行えるレベルの準備しか必要ないため、このトリックを演じる前に別のトリックを演じ、演技の際にもう一方の予言用のデックを取り出すだけで演技に入ることが出来る(ギャンビットの仕方次第では簡単な準備すら不要に出来るが、ここで語るものでもないかなと)。
一部イロジカルな操作もあったりはしたが、すんなり受け入れるものであった。
もとの「overkill」好きだけど、もうちょっとなんかこースマートにしたい!とか思っている人は観てみるといいのではないかなー。
SELF ASSEMBLY
2段構成のエース・アセンブリ。
4つのパケットを作り、4枚のエースをそれぞれのパケットに入れるが、スペードのエースの山に4枚のエースが集合する。
再度エースをそれぞれのパケットに入れるが今度は集合せず、すべてのエースの裏色が変化する。
パケットはエース・アセンブリでよくある4枚のパケットを4つ作るのではなく、13枚位のパケットを4つ作るタイプ。
1段目のエースの裏面を上手く隠したまま行うアセンブリは良いと思う。
同じサトルティを用いたトリックはたまに見かけるが、あのサトルティは良いですよね、好きです(今回のトリックではちょっと雑さがありましたが)。
2段目はなんというか野暮ったい印象を受けました。
他にもっと良い表現があるような気がします。
アイディアは面白いけど演じるにはちょっと、って感じでした。
インスピレーションのもとにはなりそうなので、手順自分で考えたい人はいいかも。
付属のカードを使うとすべてのエースがバラバラの色、とかに出来るけど赤デック使っててエースだけ青裏、とかでも平気。
SPIN DOCTOR
4枚のエースを使ったツイスト現象の後、バラバラの裏模様に変わる。
単独で販売もされていたトリック。
付属のカードで演じれる。
人気作だけあって安定して面白く、演じやすい。
最後に
面白かったと思ったのは「BOX OF DOOM」あたりでしょうか。
他のトリックも、駄作とかそういった類いでは決してないので悪しからず。
わたしの趣味に合わないというだけです。
フラクタル・マジックというコンセプト自体は非常に良いと思うのですが、フラクタルであることが最大の効力を発揮するのはおそらく手品を見慣れない層。
ですが初期状態を示すのがカウントと口頭説明だけと、マジックを見慣れた人の先入観に依存しているように思え、終始一貫した思想というにはちょっと視野が狭いように感じました。
なんかボロクソに書いてしまったような気がしますが、パケット・トリックが好きな人は多分気にいると思いますし、悪くないDVDだと思います。