所感:「At the Table Live Lecture 4(SEPTEMBER 2014) – Darwin Ortiz」
At the Table Live Lecture 4(SEPTEMBER 2014) – Darwin Ortizとは?
2014年9月に行われたMurphy’s Magic主催ライブレクチャーのDarwin Ortiz(ダーウィン・オーティス)回。
Darwin Ortiz氏はギャンブリングで有名なマジシャン。アメリカ・ニューヨークの生まれで親しい友人にデビッド・ロスがおり、デレック・ディングルに師事していた。
DLC、DVD、他のマジシャンのレクチャーも一緒になったDVD5枚組セットがあり、「4」はセットDVDに割り振られたナンバー。
所感
・上からのカメラがクソ
・パッケージの目次に記載されてる一部トリックはやってない
Fast Company
ジョン・バノン氏の「Play It Straight(トライアンフ)」のオーティス版。
デックを裏と表がバラバラになるように混ぜ、観客と演者でパケットを半分ずつ持ってどちらが速く向きを揃えれるか勝負するが、演者が一瞬で揃えて勝利する。
その後、1枚のカードを選んでもらい、デックを更に裏と表で混ぜるが、1種類のマークだけがすべて表向きになっていて、欠けているカードが選んでもらったカードなのである。
セットが少し複雑になり、途中で起こる現象が増え、裏と表が混ざっている事を示すフェイズが多い。
途中で行われる4分割のディスプレイを始めとする、裏表が混ざっているのを見せるサトルティのいくつかは応用出来そう。
正直くどいくらいに裏表を見せ・混ぜるので、逆に何かやっているのでは?感は否めない。
Asi Windの手順(スリー・カード・ルーティンズ収録の「Triumph and Triumph Again」)ほどセットは懲りたくないけど、現象は少し増やしたい。とかなら考慮する余地はあるかもしれない。
Play It Straight系の現象であれば、Asi氏の作品やジョシュア・ジェイの「Trumped Triumph」(DVD『Close-up,up close Vol.3』等に収録)や、タナカヒロキ氏の「O.S.P.I.S.T」(大阪大学奇術研究会OBによる作品集・冊子『まちかね山の魔法』収録)あたりが個人的には纏まってて良い手順だと思う。
Jacks Or Better
フォールス・ディールのデモンストレーション。
デックの上にまとめて置いたジャック4枚を、自分のところにだけ配るというイカサマを披露(配るのは2箇所)。
でも失敗してジャック4枚は観客に配られるが、演者のところにはエースが4枚集まっている。
超絶テクニックを使わないと出来ないことを、ちょっとだけ難しいテクニックで再現する系。
でもなんかリズムが良くない。
ギャンブリングにマジック特有のフォールス・ディスプレイ入れると、観客に示さなければいけない都合上、間延びした感が否めない。
うーん。
Hard Target
2枚の赤いクイーンによるサンドイッチカード。
観客に覚えてもらった2枚のカードを2回に分けて捕まえる。
ファロー使った手順。
不思議だけどパーフェクトファローを2回行う必要がある。
また、観客が取り上げるパケットの枚数には注意を払わないと失敗する可能性がある。
失敗するとどうなるかは実演で確認できます(回避できたはずなのにどうしたのであろうか?)
デックを正確に26枚に分けるコツみたいなお話もあり。参考になるかどうかはちょっと分からない・・・。
The New Back Off
バックオフ現象。
両面に「裏」が印刷されたミスプリントカード4枚が、普通のカードに変化していく。
氏が発表した「Back off」のさらに改案。
「ある有名なミスプリント」というタイトルでオーティス氏の「Back off」が荒木一郎氏の書籍『舶来カード奇術あ・ら・カルト』に収録されていたことがあります。
今回のnew手順と、荒木氏のあの本に収録されていた手順、何が違うのか全く分かりません。
バックオフという現象に興味があればどうぞ、といったところ。
なんかカードの扱いが重苦しいのが気になる。
バックオフ現象をすることがないというか、おそらくわたしがあまり興味を持ったことのないプロットなため、バリエーションをあまり知らないのでありますけど、佐藤喜義氏の「黄昏バック・オフ」(ノート『アメイジング・サリー・ノート13』収録)や、MO氏の「hide and seek」(DVD『NUOVO』収録)あたりが印象に残っているやつでしょうか。
José Carroll氏の「Reflections」(書籍『52Lovers』収録。邦訳あり)というトリックの中に一部で、バックオフのシークエンスがありましたね。
バックオフという現象が好きな人であれば、リフレクションズからの派生トリックとかも合うかもしれません。
Card Sense
3人の観客に十数枚ずつほどカードを持ち上げてもらい、ボトムのカードを覚えてもらう。
覚えたカードを次々当てていく。
不思議である。ピークの方法が参考になるかな。
トリックそのものよりも、パケット・トリックを挟むことでデックをさりげなくスイッチする構成とかいいですねーとかそんなの。
指先で感じ取るっていう演出ならば、個人的にはダイレクトに当てるよりもルーク・ジャーメイ氏のように色を感じ取るって演出のほうがリアルかなって思いました。
Appointment in Samarra
封筒にスペードのAを入れて封をし、サインをして財布にしまいます。
その後デックから1枚選ぶとスペードのAであり、サインした封筒を確認すると空っぽになっている。
ガイ・ホリングワース氏の「カサンドラ・クアンダリー」をオーティス風に。
ギャンビットのアイディアや、カードじゃなくてカードを入れた封筒にサインするところ(原案もそうだけど)、辺りのシークレットムーブとかサトルティなんかの、封筒周りのアイディアは良かった。
ガイ・ホリングワース氏のと比較すると、難易度は比べ物にならないほど簡単になっている。
封筒についての扱いは、オーティス氏の方が良いと思う。簡単だし効果的になっている。
ただそれ以降の部分(カードを選んだりするとこ)では、変に改めをしようとした結果、マジシャンが見ると丸わかりになっている上、非手品人が観ても「なんでそんなにもぞもぞしてるの?」と思われそうな動きが多く、そういう部分は少し萎えるなぁと。
あれなら無駄に改めしない方がマシな気がする。
クラシックなフォースを決めなくてはいけないわけでもないし、色々やりようはあると思う。
マックス・メイビン氏あたりであれば、ありえないくらい上手くやりそうである。
トリネタには良いと思うので、少し後半を調整して演じるのとかがいいのではないかなーと。
Strip Out Shuffle
テーブルで行うフォールス・リフル・シャッフルのコツについて。
一から教えるというよりかは、上手く出来ない人へ向けてのTIPS。
Doppelganger(Performance)
トラベラーズと「共鳴」系の現象を足した手順。
デックから4枚のAを取り出してサインしてもらい、デックへ戻す。
デックとは別裏の4枚のエースを取り出して観客へ渡し、混ぜてもらった後にポケットや財布の中へしまってもらう。
観客が自分のポケットからA(別裏)を取り出すと、同じマークのAが演者の同じ位置のポケットから出現する。
原案の方が良いと思います。バーノンのトラベラーズ。
パームの理由付けをするために、デックを箱にしまったり出したりポケットに入れたりかんだりと忙しない。見た目にも美しなくさすがに本末転倒だと思う。
マニアを引っ掛けるために濁ってしまった典型。
最後に
構造的には興味深い作品があったのだが、手付きというかタッチがどこか重苦しいのが気になった。
考え方や構成について、納得出来る部分はあったりするのだが、どこか木を見て森を見て・・・るけどおいちょっと待て、その森オカシイ的になっているように感じた。
収録トリックで一番面白いかなぁって感じたのは、色々粗はあったけど「Appointment in Samarra」。
原理的には「Hard Target」だったかなと(こちらは似た原理のをいくつか見た覚えはあるが)。
興味のあるトリックがあればどうぞ。って感じです。
あ、テーブル・フォールス・シャッフル/カットなんかはとても綺麗でした。