オール・ア・ライクムーブにおける手品人・非手品人の認知の違い
手品を観ることが趣味(自身は手品を一切しない)って人間は、中々手品をする人間の近くに居ないものだと思っている。
マジシャンは仲良くなると、簡単に手品を教えちまうからだ(どんなに簡単なものでもな)。
だから、手品をしない人からフィードバックをもらったところで、何かしらの先入観っていうのは入っているものだと思っている。
確かジェイミー・イアン・スイスも言っていた。
自分の演技に対する素直な意見を聞きたいなら、ショーが終わった後にトイレの個室に籠もって聞き耳を立てろと。
いいアドバイスだと思う。そんな場所でもないと、正直な感想なんて聞けない思う。
ぶっちゃけ多少言いたいことがあっても、面と向かってなら遠慮するだろう。特に日本人だと。
・・・ふむ、ひどい感想を本人に叩きつけるのは普通憚られるが、そのマジシャンが無関係であれば容赦ない罵詈雑言が飛ぶのではないだろうか?
話を少し戻すが、普通マジシャンの近くには、手品のことを一切知らない手品を観るのが趣味の近しい人間など中々居ないのだ。
わたし、実は近くにそんなやつが居るのである(*書いてる人曰く、生きてればどこだろうが近い)。
「正直あんま手品観たくねぇ」そんな気分のときも、なんか一緒に観ることを強制されたりする。
手品人よりも手品観てるとかナニモンだよ、といつも思う。
ちなみにどんな言葉が飛び交うかと言うと、罵詈雑言の嵐である。
・・・
あー、さすがにこれは盛りすぎた。罵詈雑言も飛ぶが実はそこまでひどくはない。わりかし普通に驚いていることが多い。
手品をしている私から観ると「古典」「パクリ」「セリフちゃんと考えろ」「よくこんなんでプロとかやってるよね」「基本からちゃんとやれよ」「えー、と、あーしか言えんのかい」といった感想がよぎる(実際は口に出している)のだが、某非手品人は普通に楽しんでいたりする。
そんな中、リアルタイムで口から出る感想を聞いていると「あーそこ疑問に思うのか」「あ、これ通用するんだなぁ」という箇所が多々存在する。
一人のそういう人間(手品を知らない人)の言うことなので、100%間に受けるのは危ういとは思うが、周りが注意しなくなって勘違いした老害マジシャンや、下っ端侍らせて悦に至る勘違いマジシャンの意見を参考にするよりは遥かに信頼出来るものだと思うので、興味深いなぁと思ったことを残しておこうかと思い立った。
あれ、なんか書いてて思ったけど長くね?
簡潔にささっと書いて終わらすつもりだったのだが、まぁいいや。
今回取り上げる、感想を聞いていて気になった事というのは、
一部のオール・ア・ライク・ムーブについてである。
知ってる前提で書きたいのだが、一応簡単に説明しておくと1枚を何度も見せる動きのことだ。
デミニッシング・リフト・シークエンスは便利なムーブだが、マジシャンから見るとすぐに何を目的としたものか分かってしまうのはとりあえず置いておいて、非手品人に見せる想定であっても「同時に表が表示されているのが1枚」という部分が気掛かりだったりしないだろうか?
少なくともわたしは気になる。
だが、実際に演技に用いられてるのを観たときの反応を見ていると、通用しているようである。
それとなーく(変な知識を付けないように最善の注意を払った)聞いたことを要約すると、どうやら裏向きのカードのうち、どれが何か考えていたため1枚しか表面が出ていないことにそもそも気づいていないようであった(裏面であることが功を奏し、都度開示された情報の理解でいっぱいいっぱいのようである。エルムズレイ・カウントの際に「4枚のAがあります」というとバレやすくなるが、「裏向きのカードはないですよね?」と言いながら4枚のAを見せるとバレにくい理屈と同じだろう。アスカニオはなんて言ってましたっけか)。
その後、かなり日をあけ「同じカードが2枚ある」っていう状況について、違和感を感じないのか遠回しに聞いてみた。
「裏の青いカードが赤に変わって、全部赤になったりするから、表も変わって増えたりするんじゃないの?」
ふむ、ケーフェイじゃ。
とりあえずデミニッシング・リフト・シークエンスは通用するらしい。
だが、
駄目っぽいオール・ア・ライク・ムーブが存在した。
フラストレーション・カウントである。
「んー、なんで見せたのと違うやつ取ってんだろう?」
「・・・」
わたしは沈黙した。
手順上、もう一度フラストレーション・カウントが行われた。
「バレとるがな」
「・・・」
どうやら通用していないようである。
一応断っておくが、このとき観ていたのはかなーり上手いマジシャンであった。
だが、2枚のカードを見せるときなどには反応していないところを見ると、2回以上同じ動きをすると駄目だったようだ。
わたしは以前より、フラストレーション・カウントはブランクカードやバックを隠すような状況でしか使わないほうが良い、と思っていたのだが、そんな工夫しようが2回以上したときは気づかれているようであった。
これに気づいてから、わたしはフラストレーション・カウントを行う際、5枚あろうが1回しかあのムーブを行わないという対策をしていた。
5枚の内1,2枚だけを見せたほうが、馬鹿正直に全部見せるよりも安全で説得力があるらしい。
という、オール・ア・ライク・ムーブの観ているときの非手品人を観察したときの知見でした。
参考にするかしないかはあなた次第で| |Д`)