所感:「RED MIRROR by Helder Guimarães」
- 1. RED MIRROR by Helder Guimarãesとは?
- 2. 所感
- 2.1. 4・フォア・フォー(4 For Four)
- 2.2. ヘルダー・スケルター(Helder Skelter)
- 2.3. スカルプチャー(The Sculpture)
- 2.4. ナマケモノ(Sloth)
- 2.5. インビジブル・スレッド(An Invisible Thread)
- 2.6. アベルト・コート(Aberto Court)
- 2.7. カーディシャン・コーディネート(Cardesian Coordinate)
- 2.8. インタビュー:アドバイス
- 2.9. インタビュー:マジックとの出会い
- 2.10. インタビュー:リハーサルについて
- 2.11. インタビュー:演技の構成
- 2.12. インタビュー:なぜカード・マジックなのか?
- 2.13. インタビュー:演劇について
- 2.14. インタビュー:マジックの古典的なプロット
- 2.15. インタビュー:演じること
- 2.16. メリー・アンドリューズ
- 2.17. エース・アンド・グラス
- 2.18. カードとサインとグラス(演技のみ)
- 2.19. ノーマッド(Nomad)
- 2.20. オマージュ(Homage)
- 2.21. インタビュー:?
- 3. 最後に
RED MIRROR by Helder Guimarãesとは?
FISM 2006 close-up Card部門チャンピオン、Helder Guimarães(ヘルダー・ギマレス)氏の2nd DVD作品集。
収録されているのはすべてカードマジック。日本語字幕版が出ている。
所感
- 基本的に実演→解説→コメンタリーといった構成。
- 隠しチャプターあり
- 難易度は高め
4・フォア・フォー(4 For Four)
少しセットが必要。
ここまで綺麗に演じるのにどれだけ練習が必要か。
何もしていないように見えるが、裏でやってることは初心者お断りな作業である。
だが習得できなくても、ヘルダーが何を考えているかを知るだけで間違いなく上達すると断言出来るので、初心者だろうが手を出して欲しい。
○ームしながらドリブル、少し練習すれば出来るようになるよ。と解説では言っていたが、解説後のコメンタリーでは「数ヶ月練習したらできるようになり」って少しじゃねぇ!とツッコんだのは私だけじゃないと思う。
ヘルダー・スケルター(Helder Skelter)
観客の選んだカードを見てみるとそちらが4枚のエースになっており、直前までエースだと思っていた4枚が観客の選んだ1枚のカードになっている。
畳み掛けるように現象が起きる。
演出はサッカートリック、現象的にはジェネラルカードや1-4トランスポジションの混成みたいな感じ。
現象は実際に見て欲しい。
複雑な現象なのだが、観客からは「あっちだと思ったらこっちだと思ったらあっち」と認識してるようで、マジシャンが思っているよりも分かりやすいらしい。
演じやすく、客受けも良いトリックである。
難易度も比較的易しい。
スカルプチャー(The Sculpture)
観客のカードを、2枚のジョーカーが徐々にサンドイッチして見つける。
すごくフェアに見えるスローモーション・サンドイッチカード。
ギャフを1枚使うが、演技後、観客が調べたくなる場所には無いので安心。
フォースもしない。
構造が美しい。
ナマケモノ(Sloth)
ちょっとセットアップが必要だが非常に効果的なエフェクト。
テンポよく現象が起きるのでオープニングに非常に良いかと。
4枚のエースと4枚のキングが揃うので続けてリセットでも。
インビジブル・スレッド(An Invisible Thread)
無理な操作が無くなってスマートになったリセット。
あのイロジカルなムーブ(ワン・モア・カウント)とか好き。
現象と演出が上手く噛み合ってる分、口下手なマジシャンには逆に難しくなった面も。
スチュワート・ゴードン・ダブル・ターンオーバーの解説
通常のやり方に加え、ダブルを持った状態で動かす方法、ターンオーバーからのプットダウン、タマリッツターンオーバーへ移行するハンドリング等の応用についても解説される。
どれも有用である。
アベルト・コート(Aberto Court)
カードが移動したり、ジャケットのポケットから出てきます。
オープン・トラベラーズを演じる上で問題になる「4枚目の移動」を変化現象に置き換えることで、演じる場所や状況の影響を受けないで演じれるように上手く解決している。
他のマジックに応用が利きそうなカウントやスイッチも良かった。
関連記事:「トラベラーズ」と「オープン・トラベラーズ」って違うの?
アスカニオ・スプレッドの解説
ヘルダー式アスカニオ・スプレッドの使い方。
カーディシャン・コーディネート(Cardesian Coordinate)
準備が少し多いが、トリネタだけあって非常に強いトリック。
ワレットはいわゆるカップス・ワレットだが、ヘルダーが演じている通りにするのであれば、普通の財布を買ってきて加工することになる。
妥協して一部だけでも十分不思議だが、ワレットへのロードに関してのアイディアは、Paul Butlerのカード・トゥ・ワレットやJean-Pierre Vallarinoの「Poche A Poche」とほぼ同じなので、その場合ヘルダー氏の手順の持ち味が消えてしまうような気がしないでもなく、ちょっともったいないような気もする。
カップス・ワレットの機構も解説してくれているが、知らない人が観て理解出来るかはちょっと分からない。
インタビュー:アドバイス
上手くなるためのアドバイスについての話。
マジオンライブレクチャー「TAKAHIRO」回でも同じこと言ってましたね(Yoshida Daisuke氏の発言だったかと)。
色んな人が同じことを言ってますが、自然に自覚出来る環境が大事であることを説いてます。
以前わたしの身の回りに居た「上達」を諦めた人達は、きっとこういうことを言ってくれる人が居なかったんだなと思いました。
たまに「これ以上カードマジックは発展しない」といったことを自信満々に発信している人を見かけますが、上達することを辞めました宣言にしか聞こえないのですが恥ずかしくないのでしょうか?
インタビュー:マジックとの出会い
4歳からはじめました(ドヤァ
インタビュー:リハーサルについて
リハーサルはそんなにいらないんじゃないかな(御飯食べるのも忘れてずっとリハーサルしてないとは言ってない)
インタビュー:演技の構成
演技構成をどう考えているかを「アベルト・コート」「カーディシャン・コーディネート」周りを例にして説明。
もっと詳しく知りたければ、書籍『リフレクションズ』の「インバージョン・システム」の項が詳しいのでおすすめ。
インタビュー:なぜカード・マジックなのか?
カードマジックにのめり込むきっかけになった諸悪の根源たちの話や、古典を学ぶことの大事さ、原案の狙いを理解する大事さを語ります。
あ、これ止めないとずっと語り続けるやつだ。
ヘルダーがシャイ(自称)で助かった。
インタビュー:演劇について
大学4年間で演劇を学んで良かったこと。
クロースアップだと軽視されてる風潮がありますが大事なことです。
インタビュー:マジックの古典的なプロット
色んな人が古典の改案を出してるけど、ほとんどのやつは原案の方がいい(煽り
改案するときに注意するべきことについて等。
インタビュー:演じること
演技を良くしていくために出来ること、といった内容。
メリー・アンドリューズ
エキストラメニューにあるトリック。
奇をてらったクライマックスではない純粋なツイスト。
ショーの最初に演じるために考えたトリックなのだとか。
ジョーカー4枚を使うので、続けて演じるためのジョーカーが4枚必要なトリックとかも考えるのがいいかもしれません。
松田道弘氏のジョーカー・アセンブリシリーズ(松田氏の著書にたまに出てくるジョーカー4枚を使うトリック群)とか?
エルムズレイ・カウント
エルムズレイ・カウントを上手く見せるための2つのコツの解説。
エース・アンド・グラス
デイリーのラストトリックをワイングラスに入れて行う。
ギミックを使用するが作成は簡単だろう。
演技自体は短いが、ひとつひとつの動作について考え抜かれている。
理論も参考になる。
書籍『リフレクションズ』にも掲載されています。
カードとサインとグラス(演技のみ)
いやー不思議です。
演技のみで解説はなし。
演技見てやりたいと思ったら書籍『リフレクションズ』には解説があるのでそちらでどうぞ。
サロンくらいで大人数の観客相手に演じる場合に重宝すると思います。
「エース・アンド・グラス」もそうですが、カードが入るサイズのワイングラスって結構見つけるの大変ですよね。
ノーマッド(Nomad)
隠しチャプター。某画面で20秒ぐらい待ってればいいんじゃないかな。
2デック使うので気軽に演じれるようなトリックではないが面白い。
オマージュ(Homage)
隠しチャプター。「ノーマッド」とは別の某画面で20秒ぐらい待ってればいいんじゃないかな。
フレッド・カップスの「ホーミング・カード」をリスペクトした手順。
ギミックやら色々使うため、デックから取り出して演じるといったことはしづらい。
とても面白いが、これを演じて受けなかった場合、間違いなく演者の演技力不足なので心折れると思う。
あと言い忘れたが、誰だお前!
インタビュー:?
隠しチャプター。全編再生以外のところからインタビューを再生すると観終わった後に・・・。
ヘルダー氏がマジックへの愛を語る。
若干キモい。
最後に
収録されているトリックの難易度は高めだが良いトリックばかりである。
しかしそれ以上に、ヘルダー氏の考え方を知ることが出来るの良い。
上手くなりたいのであれば観ないなんて選択肢はないと思う。
名作である。