所感:「MAJION LIVE LECTURE ―野島伸幸 サロン特集―」

MAJION LIVE LECTURE ―野島伸幸 サロン特集―とは?

2020.6.21に行われたMAJION主催のLIVE Lecture野島伸幸氏5回目。

「実際に演じられること」を主眼としたサロンマジック、そして「簡単」ということになっている。
サロンマジックと言えば、トランプ以外の物品を使ったものが一般的に思えるが、野島氏のこだわりにより「パーラー・サイズのトランプ」を使ったネタが気持ち多めに収録されている。

マジックの依頼を受けたら、サロンくらいのショーが必要・・・となること多いと思うので役立つこと間違いない。

購入ページへは下のリンクからどうぞ。

所感

手順実演

約15分のショーをまずは実演する・・・という予定になっていたが18分+アンコール用トリック6分で計24分ほどのショーが冒頭に行われる。

観客に参加してもらっているときに起こりがちなトラブル?が結構発生するので(口に出さずに思ってもらうだけだった数字を言われてしまう等)、そういった部分をどう対処するのかなんて部分も参考になる。

この手順はカードマジック(使用するカードはパーラー・サイズ)が多め&売りネタも入っているので実演or解説を見て気に入ればどんぞ。といったところ。

手順に入れたかったけど入れれなかったネタ・ツイスティング・アームのバリエーション

現象 腕を交差させて手を組んだ後に、ぐいっと元に戻すあのネタのバリエーション。
演者は出来るが、観客は出来ない。

いきなり冒頭では行っていないネタをぶっ込んできた。
本当は手順の中に入れたかったが、いい感じに入れれなかったのだとか。

ぐいっと元に戻すために行うあのギルティな操作がないため、元ネタを知っていても不思議。ひっかかる。
これ覚えておくと便利ですね。

ただ、歳を取ると出来なくなるらしい(リスナーさん談。肩が上がらない的な意味で)。

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ゆき
加齢によって出来なくなることが増えるのは辛い

オリガミ・チェンジ

MAJIONベストセラーアイテムであるオリガミ・チェンジの最新ハンドリング。

現象 謎の模様が書かれた紙を折ると「手品」という文字が現れるが、なんだか向きがおかしい。
一度折り直すと正しい向きになり、振ると模様が変化して「拍手」の文字が現れる。

DVDに収録されているハンドリングよりもさらに洗練されているが少し難しくなっている
特に言うことはない。掴みに最適な鉄板ネタである。

状況に合わせて複数種類欲しくなりますよねーこれ。オーダーメイドも出来る。

シークレット・オブ・ナンバー

現象 数字が書かれたカードの中から1枚選んでもらい、そのカードを当てる。

その後、3枚のカードを引いてもらい、その中の1枚だけを心の中で思ってもらううが、思っているだけのカードを当ててしまう。

特に変更はないようでさらっと流す感じの解説。DVDでの解説とほぼ同様の内容。

初出のとき(週刊マジオン2017年7月号)は手書きカードであったが、今現在は裏が黒塗りの専用カードが売られている。
黒塗りバージョンいいなー

専用カード作成にあたって、セットとか覚えなくても良いようとか色々工夫されたアイテムになってたんですねー。
ここで使われてる原理、すごいなーと初出のときから思ってました。

電卓使って出てきた数字通りにトランプ取り出すやつ

現象 トランプを観客にシャッフルしてもらった後、電卓にトランプの上数枚くらいと同じ番号を打ち込む。

その後観客に電卓を渡し、頭の中で思ってもらった数字を掛けて未知の数字にしてもらい、トランプはポケットの中に入れてもらう。

この状態から、電卓に表示されている数値のカードを次々に取り出していく。

数字に関する謎の原理が出てくる。ふえーなんじゃこれ、気持ち悪い。初めて聞いた原理。
電卓がないと使いにくい原理だと思うけど、面白い。

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ゆき
面白い原理だけど、使い途とか思いつかんわ・・・系です

この手順からパーラー・サイズのトランプを使っており、トランプ手順が連続します。

手順の一番最初に、観客にシャッフルしてもらっているのだが、続くエース・アセンブリ/フライング・ピクチャーのためのセットアップがこの「電卓トリック」の演技終了時点で出来上がるのでそこもよく考えられている。

こういった構成の考え方はショーを組み立てる際に効果を発揮するだろうなぁ。自然にこういう事を考えて組み込めるようになれたら、すごく良い。

こういった構成についての事が載っている資料だと、東京堂出版から出ている『ヘルダー・ギマレス リフレクションズ』なんかが個人的には分かりやすかったので興味がある人はどんぞ。

エース・アセンブリ

全国サロンマジックレクチャーツアーのときにだけ解説していたものの初映像化

非常にクリーンなスローモーション・エーセス

続けて使用しているのはパーラーサイズのカード。
「フェニックス・パーラーデック」やで。

カードのサイズが大きくても問題ない技術のみで演じられるが、全くスライトが出来ない人にはそれなりに難しいかもしれない。

「ブラザー・ジョン・ハーマン先生のアルティメット・エーセス」という言葉が出ますが、これは「ファイナル・エーセス」の間違えですね。

以下、手順自体とはあんまり関係ない話なので適当に読んでください

手品を始めた頃「スローモーション・エーセスはクライマックスが予想出来るから駄目。オー・ヘンリー・エーセスとかの方が良い」といったような話を聞いて「はー、確かに」と思っていたりしたのですが、今考えてみるとスローモーション・エーセスがサスペンス・エフェクトの要素が大きいのに対して、サプライズ・エフェクトに変えたほうが良いって意見はナンセンスというか、本質的な部分を何も捉えていない考え方だったんではないかね?と思うようになりました。

クライマックスを足してサプライズに安易に逃げるやり方に賢さはない。というのを肝に銘じておこうかなーって思いました。

フライング・ピクチャー

これも売りネタ&MAJIONのベストセラー

現象 カードを1枚選んでもらい、デックの適当な位置に差し込んでおきます。

予言のシートを見てみるとすべてのカードが印刷されていますが、おまじないをかけると選んだカードだけがシートの中から消え(穴があく)、他の場所へ移動します。

また移動した先の場所に印刷されている両脇のカードと、実際に選んだカードを差し込んだ場所に隣接しているカードが一致しています。

受けるの間違い無しの鉄板ネタなので、わざわざその辺を語ることもないかなぁ。

最初取り出すときのセット方法や、改める際の注意点なんかが地味ながら効いてると思います。
こういう小さいことの積み重ね好きなんですよね。

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ゆき
こー、見てると「いいね、いいねー」ってなるんですよ

イマジナリー・プレディクション

マジックマーケット2019で販売されていた商品。以前記事に書いたこともある。

基本的には前回記事に書いたことと変わらないが、自分で道具を調達するとなると予言のカードが一番お金がかかりそうである。

今回の新しい要素として、演出用にとある道具を使っているのだがそれがかなり効いてると思う。
これなしでもかなり説得力があったのだが、道具を使うことでだいぶ強化されている(とわたしは思った)。

この新・道具どこにでも売っている物なので調達は容易。
もしかしたら、すでに似た用途で使っているマニアも居るかもしんない。

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ゆき
一番の問題はカードかなぁ・・・と

カードを選んでもらう方法はマニアにはよく知られた方法なのだが、せっかくなので他にも使えそうな手法を挙げると

・Rus Andrews氏のDVD『Spoken』で使われていた方法

・yuki_jwlbox(わたしだ)のnote『JewelryBox』に収録されているエニエニで使っている「Spoken」を元にした方法(いうほどspokenと変わらない)

・Ben Harris氏の『サイレント・ランニング』法

・Derren Brown氏のDVD『The Devil’s Picturebook Disc2』に収録されている「Invisible Deal」の方法

このあたりが親和性が高そうなので興味のある人は調べてみたら楽しいかもしれない。
ダレン氏の方法はそのままやると最後1枚くらいまでいってしまうけど、上手いことやればいい塩梅なトリックになったりするんじゃなかろうか。

N.N.N.N. Bill Production(4N紙幣プロダクション)

売りネタであるトリックの別ハンドリング。
空の手の上に突然千円札が現れます。

過去に質問された「上手いことで出現させれない」という質問に対しての対処法が参考になりそうですね。
気づかない人は意外と気づかない系の小さな工夫。

休憩時間のお話

・今回のサンプル手順のテーマやコンセプトについての話
野島氏の狙いや考え方が垣間見えます。

・キッズマジックについて思うこと
リスナーからの「キッズマジックについて」という質問に対して野島氏が意見を語る。

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ゆき
誰にでも苦手なものはある

・ポーカーサイズとパーラーサイズのトランプの見え方とか
クロースアップで演じるときと、サロンで演じるときのカードのサイズによる見え方の違いについてや注意点といった内容。

色々な形態でマジックを演じている人ならではの話。参考になります。

コロナ騒動で動画配信するプロマジシャンが増えましたが、動画配信をするにあたり最適化する努力をしない人(もしかしたら気づいてすらいないのかもしれません)が目立ちますね。

ファンティア配信の中で野島氏がその辺りについて結構辛辣に語っていましたが、わたしは聞いててうんうんと頷いていました。

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ゆき
はい、それだけです。特にこれ以上言いたいことはねぇです

ダブルフェイス・プレディクション

新・箱根クロースアップ祭2020で販売する予定だったマジックの実演。

解説はされないが、用具が必要なのでまぁ。気に入れば買ってあげればいいよ!

ほぼセルフワーキングなのだが、本来なら「これくらいは覚えろや」と言いたくなる部分すらも、工夫でさらにやりやすいようされている。

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ゆき
セルフワーキングでも練習はしろ

ロープ・結び目の手順

ロープの結び目が出来たり解けたりする手順。

3つの結び目が出来て、解いて、また結びが3つ出来、一瞬で全部消える。

Milbourne Christopher(ミルボーン・クリストファー)氏の手順が元になっているんだとか。レギュラー1本、1尋(約1.515m)くらいの長さがあればベスト。

ここで行われているフォールス・ノットは非常に説得力がある。
澤浩先生に聞いてみたところ「見たことない」と言われたとのことなので、きっと新しい。でも名前は付けていないようだ。

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ゆき
ロープの技法って、名前・・・覚えれない

リスナー「名前はありますか?」野「付けてないです」

最後に

比較的どれも簡単なものだったので、サロンでカードマジックを演じたいという人にはとても役に立つと思います。なんならサンプル手順をそのまま演じるだけでも十分かもしれない。

売りネタが多いのが難点かもしれないけど、値段の高い物は無いのでそこはまぁ各々どうするか考えて欲しい(わたしはほとんど持っていたのだ)。知った上で「欲しい」と思ったらそれは必要なものですよ、きっと。

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