所感:「2020 by 堀木 智也」
2020 by Tomoya Horikiとは?
日本人コインマンである堀木智也氏のDVDおよびDL作品集。
映像作品としてのリリースは1ST作品集『SPROUT』以来になる。
収録時間は約45分。
マジックショップでの販売予定はなく、入手するには一部イベントでの頒布、本人からの購入、氏のファンティアに一定期間加入してる人にのみ限定的に販売する。といった形態になっている。
所感
Frottage
1枚のコインのプロダクション。
紙を物に当てて鉛筆で上からこする「こすり出し」をイメージしたプロダクション。
今回の作品集が初出。
掌の上にゆっくり出現する。
1枚だけなのでワンチャン簡単なんじゃね?と思ったけど甘かった。
Underload 2.0
4枚のカードをテーブルに置くと、カードの下から4枚のコインが出現する。
書籍『Coinlang』に収録されていた手順のアップデートバージョン。
現象としてはどちらも同じで、4枚のカードを使ったマジックだと思った?コインマジックでした系。
今作の解説では、フラッシュしやすい点・どうすればフラッシュしにくくなるか・どうすればやりやすいかのtipsや変更した狙いについての説明等も充実している。
Air Coin Cut
なかなか口では説明しづらい、いわゆるコイン・カットの手順。
観客の選んだカードの上に、コインが消えて移動する。というプロットであるコイン・カットという現象をコインを使わずに行う、のだがそれもちょっと正確な表現ではない。
こざわまさゆき氏が得意とするような、言ってることと見えてることが一致していない不条理さが全面に出たマジックである。
まぁ見ればわかると思うよ。
書籍『Coinlang』に収録されていた手順。
少し変更点があるが気にするほどではない。
どちらかというと「コインカット」というプロットを知っているマニアを殺しに来た作品。
知らない人が観ても不思議ではあるのだが、最大の効力を発揮するのはコインカットを知っている人であろう。
珍しくコインをあまり使っていない。
Minimum Coin Box
4枚のコインとコインボックスを使った手順。
1段目は4枚のコインがボックスの中へ移動し、2段目ではボックスの中から手の中へ移動してくる。
通常のコインボックス手順でよく見られる「特有の動き」が排除された手順であり、テンポよく現象が起きる。
書籍『Coinlang』に収録されていた手順であるが、一点のみ変更点があり、その部分の操作をメインに解説すると前置きされる。
・・・変更点のみと言ったな?なんだかんだで全部きっちり解説するぞ。
・・・変更点は一点のみと言ったな?一段目の簡易化した手順も紹介してるから、見る人によっては変更点は2つだ。
主な変更点は、多分マニアを殺したいのであろうなぁと思う操作。
フェアだが難しくなった。
合理的な動きではあるので慣れれば逆に安定はするのだろうなとは思う。
一段目の簡易手順は、本当に簡易なので安心して良いと思う。わたしを信じろ。
Routine
「Floating Production」「Before Matrix」「After “Before Matrix”」3作品をルーティンとして実演。
解説は後ほど。
V.T.P.
DVD『SPROUT』にも収録されていたあの技法の解説。
名前が変わっているのは、名称自体がネタバレだから、長いからいちいち書きたくないから、のどちらかだろうと勘ぐっている。
ここではネタバレ危惧の可能性を採用して伏せていく方向で行く。
DVD『SPROUT』を見ればどれのことかはすぐわかりますがね。
みなさん、ステマっていうのはこうやるのですよ。
DVD『SPROUT』収録時は音声なしのかなり淡白な解説でしたが、今回は原理やコツも言語化されているためかなり習得しやすいと思う。
出来るとは言ってない。
Turnover Hide Out move
1枚のコインの上にカードを乗せ、ひっくり返すとコインが消えている。という技法。
かなり昔に考案した技法だが、手順に採用されなかったため発表する機会がなかったとか。
「使おうと思えば、使えるやつだとは思います」
ピックアップムーブがパニックホラー的なムーブだとすると、こちらはジャパニーズホラーです。
Kick Force
カードのフォース技法。
フォースを用いてたあるトリックが、バージョンアップしてフォース不要になったため今まで眠っていたそうな。
いわゆる馬鹿技法である。
難易度はかなり高いが、失敗しても成立する工夫もある。
解説を見る前に、生でやられて欲しい技法である。
Floating Production
1枚のカードから4枚のコインが出現する。
カードがコインを1枚ずつ生んでいくようなイメージのコインプロダクション。
出現したコインはマット上に、斜め一直線に配置される。
書籍『Coinlang』に収録されていた手順。
手順自体に変更点はないが、角度やリアルに見えるためのコツにも触れている。
Before Matrix
1枚のカードを使って4枚のコインを消した後、マットの四隅に瞬時に出現する。
その名の通り、4枚のコインが一度消えた後に非常に良い場所に再出現する。
書籍『Coinlang』に収録されていた手順。
個人の体質に以前する技法を使うが、代替の方法についてもちょっと触れられている(『Coinlang』には無かった)。
After “Before Matrix”
いわゆるフラッシュマトリックス。
カード1枚をカバーカードに使うフラッシュマトリックスである。
このDVD初出。
あんなコツ、言われねぇとわかんねぇよ。とみんな思えば良いよ。
神は細部に宿るみたいなコツとかを言ってます。
「この人のアセンブリ気に入らん・・・」ってわたしが思った人は、あの駄目な動きだった気がする。
ツチノコ(パフォーマンス・オンリー)
ツチノコの生活を、コインとツチノコのおもちゃを使って表現する。
どうやら日本国内よりも海外で話題だったらしいマジック。
ツチノコって海外だとなんていうのでしょう?
パフォーマンス・オンリーなので、現象をあまり語るもの野暮かと。
最後に
1st DVD『SPROUT』で無音解説だったのとは打って変わって口頭での説明。
堀木氏は喋らせておいた方が良いですね。
氏の解説は経緯や狙いややらかしガチなミスにコツ・タイミング等、あらゆることを考えて、伝わる言葉で説明してくれてます。
他のマジシャンも考えてはいるのでしょうが、ここまで明確に人に伝わる言葉にして発信出来る人は少なくとも日本人マジシャンでは知りません。
収録作品はどれも難易度の低いものではありませんが、解説が丁寧なおかげで少なくとも「あ”あ”いみわがらん」となって投げ出したくなることはなさそうです。
目的地までの道筋が見えてるだけで歩きやすいあの感じです。
入手困難で難易度も高いが、コインマジックが好きな人にはおすすめ。
個人的に感じた印象は、ヘルダー・ギマレス氏の「丸コピーじゃなくて、これ元にして色々考えるのに使えよ」みたいなスタンスの作品集のコイン版。
ちなみにイチオシはKick Force。