所感:「マジカル・プレゼンテーション by ユージン・バーガー」

マジカル・プレゼンテーション by ユージン・バーガーとは?

Eugene Burger(ユージン・バーガー)氏のDVD。2011年にスクリプト・マヌーヴァ社から日本語字幕版が発売されている。

氏は2017年に亡くなった「クロースアップマジック」「メンタルマジック」「ビザーマジック」の分野で特に高い評価を受けていた人物で、哲学・宗教学の学位を持ち、Yale Universityで教鞭を振るっていたこともある、マジックのプレゼンテーションに関わる書籍やDVDを多く発表したマジシャンであった。

この『マジカル・プレゼンテーション』は「たくさんマジックは知っているものの、それをどうやって記憶に残るパフォーマンスに変えればいいのか?」ということをテーマに、演じる上でのプレゼンテーションについて学んでいくという内容のDVDである。

所感

画質はあまり良くない

ブラック・エンベローブ・バリエーション

現象観客の選んだカードと同じカードが封筒から出てくる。

8つの演出の仕方で演じてくれている(一部、これから先はまったく同じ!なんてときは途中で演技を止める)。

トリックをそのまま演じる「スタント」、「予言」として演じる、「観客を操作している」演出、ストーリー仕立て等々、観れば自分に合った見せ方について何かしらヒントは得られるのではないかと思う。
ユージン氏があまり使わない演出方法やなぜそれをやらないかと言った話や、演出方法によるメリットやデメリット、演技する上での注意点とかも参考になる。

トリック単体がそもそも非常に強力であり且つ、ユージン氏が上手いので差異とかは感じにくい人も多いかもしれないが、マスケリンの言うところの、ただのフォールス・アート(ただトリックをそのままやってるだけの手品、のような意)からノーマル・アート、ハイ・アートへのレベルに登るためには抑えておきたい内容だと思う。

トリックそのものも非常に強力なので、気に入ればレパートリーに入るでしょう。

ただ、専用デックと予言封筒の準備が必要であり、このデックで前後に他のトリックを演じる事はほぼ不可(パケット・トリックとかはいけるかなぁ)なのは注意しておきたい。

フェイディング・コイン

現象観客のイメージしたコインが具現化する。

一応準備はいるが、小銭があればいいだけなので重宝するトリック。

ゆうきとも氏の「トリオ」の改案(ゆうきとも氏のDVD『ワイズワークス vol.2』収録)。

原案をめっちゃ絶賛しています

原理はゆうきとも氏の手順と変わらないが、こちらのフェイディング・コインの手順はテーブルに座った少しかしこまった場で演じるのに適していると思う。

無駄な動作がなく、クリーンに見えるが状況を少し選ぶ

原案の方は、周りを囲まれたり、立っているような状況でも演じれるので、ほんと状況次第でしょう。

わたしはゆうきとも氏の原案の方を演じたことの方が多かったですね、状況的に。

両方押さえておいて、状況に応じて使い分けるってのが良いと思います。

名作。

インビジブル・パウダー

現象コインを数枚握って、見えない魔法の粉をかけると消える。

ユージン氏のDVD『リアル・シークレット・オブ・クロースアップ・マジック』に収録されている「スリー・コイン・ミステリー」の別演出。

演出を利用してシークレットムーブをカバーする好例。

さらっと演じられるとホント不思議です。

オブザーボ

現象数枚のカードを2人の観客に見せるが、情報が一致しない。

観客参加型のトリック。

少人数の観客相手に演じるときに非常に良さそう
バーとかだとカップルとか夫婦に見せることとか多いですし、そういうとき便利。

ギミックカードを利用するけど、クライマックスでフェアに全部のカードを示せるのいいですね。

パケット・ケースに入れておくことになるだろうが、現象的にパケットに入れておいても不自然には見えないと思う。
ただ長期間あのネタをパケットに入れておくと心配なので、野島伸幸氏のチープ・トリックに置き換えたほうが良さそうに思いました。

アウト・オブ・ディス・ワールド

現象観客がカードを分けると綺麗に赤と黒に分かれている。

おそらく一番普及しているであろうU.F.グラントの手順前半と、アレックス・ブラウズというマジシャンが行っていた後半を組み合わせたもので、ガイド・カードを4枚使うタイプ。

覚えやすく、良い方法

ただ今回収録されている手順の目玉は、演出やそれによって狙っている効果の方だと思う。

なるほど、そこか。って感じです。

「スタント」な演じ方をしていると、おそらく「遅くする」方向に考えは巡りにくいのではないかと思った。こういう考え方もあったのかと思わされました。

うん、観てない人には伝わらない(´・ω・`)

OOTWは手法面では色々な進歩を遂げたが、演出面では全く進歩していないという言葉、重いですね。
色々考え直すきっかけになりますわ

最後に

マジックのプレゼンテーションについて学ぶ事が出来る数少ない資料のひとつなのだが、わたしは正直こういった理論系の資料がどんな層に勧めたら良いのかわからなくなっている。

昔であれば、初心者から中級者へランクアップしたいくらいの人達におすすめ・・・とか思っていたけど、「他の人と差別化されたパフォーマンスを目指そうと思った人」に勧めるのが一番なのだろうか。

「理論とかどうでもいいから良いトリックをよこせ」という人には無用の長物
同じトリックだけど、あの人が演じると面白い!という風に思われたい人が観ればいいんじゃないかなーと思う次第。

あと、このDVDの内容に踏み込んでいくのであれば、現象別分類なんかについても理解しておきたいとこ。

そんなとこでしょうかね。
名講師によるレクチャーなので、勉強したい人はどうぞです。

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