所感:「At the Table EXPERIENCE 16(SEPTEMBER 2016) – Kyle Littleton」
At the Table EXPERIENCE 16(SEPTEMBER 2016) – Kyle Littletonとは?
murphy’s magic主催のオンライン・ライブレクチャー、Kyle Littleton(カイル・リトルトン)回。
DLC、DVD、お得なセットDVDといった複数の媒体で出ているので、興味の出た人はお好きな媒体でどうぞ。
氏は『400ルクス』というビル・スイッチや、コインとボタンを使ったトリック『No Sense』などで知られるクリエイター。
所感
全体的に非常に面白い回。
名作を上手くアレンジしたり、組み合わせたり、パーソナルに合わせて演じることが出来る人なのだろうなと思った。良いセンスだ。
日用品で演じることが出来るトリックや、カードマジックのトリネタを探してる人なんかに良い内容だと思いました。
Kyle’s handling of Ripped
初っ端から面白かった。
Christopher Wiehl氏のディーラーズ・アイテム「RIP」のKyle流ハンドリング。
元ネタの方を知らなかったでの、視聴後PVを探して観てみた。
復元の瞬間がビジュアルなものの、現象が起こる状態にまで持っていくのに中々ギルティな操作を行わなければならないようだった。
Kyleのハンドリングだと現象の瞬間へ持っていくまでの間にギルティな操作がなく非常にフェアに見える。
また、この「RIP」に限らず「現象の瞬間はビジュアルだけどそこまで持っていくのが至難」なトーン&レストアのギミックのいくつかは、このKyleのハンドリングで蘇るんじゃないかなぁと思う次第。
欠点は、現象後カードを観客に手渡しして検めるにはなんか工夫がいることと(Kyleのハンドリングだと手にデックを持った状態にならない。さり気なく取り上げるとかでいけなくもないけど)、若干用具が嵩張るようになることでしょうかね。
あと、ギミックは自作できると思います(一部、口頭で簡単にしか説明していない機構がありましたが大丈夫でしょう)。
Wayne’s World
「映画」を題材にしたout of this worldで、トランプではなく「映画のタイトルを書いたカード」を使用している。
これ以降に収録されているトリック「Ticket Please」のときの様子から察するに、Kyle氏はかなりの映画好きっぽいですね。
out of this worldにありがちな配っている時間の退屈さをどうするか?問題について、普通のマジシャンが高速化させる方向にするところを「1枚配るたびにその映画について語って、限界まで長引かせる」というまるで逆のアプローチをしているのだと考えると、狂気じみていて笑えるけど意外と現実的なのかも知れない。
原理的な話をすると、4分割になるタイプではなく2分割の方。
なんか似たような手順があった気もするけど、ちょっと思い出せない。
可もなく不可もなくってとこだと思います。
また「Wayne’ World alternate presentation」のチャプターで、カードではなく別の物(映画に関するアイテム)を使った案の紹介をしてくれるのだが、こちらはサロンくらいのスペースでも演じれるようになるアイディアなので気に入ったらこっちを。
ちなみにこういうアイテムがあるんだけど、どうですかね?
Character
自分の性格や昔の話など。
自分のことを理解することの大事さなんかを話しています。
Up to Three Packs a Day
なんかよく見る気がする現象。
ギミックが必要で自作可能。
実演では2回変化後観客に手渡して終了だが、解説では2回変化後ジャンボサイズに変化してそのまま観客に手渡す。というハンドリングも解説している。
ジャンボサイズの同商品があるならこちらの方が良さげ(こっちのハンドリングの方が手渡す直前くらいの動きが自然になる)。
めっちゃ細かくハンドリングを解説しているので、似たトリックを演じる際の参考にもなるかも知れない。
常食してるこれ系のお菓子がある人は作っておいて損はないんじゃないかね。
Cheap Brands
正直、折り紙Tシャツで終わっておけば良かったのではないかなと思う。
2ドル札への変化をさせるためにはお札に細工する必要があるのだが、高額な紙幣しか存在しない日本では少し辛い(まぁ、元に戻せるいい感じな素材もあるのだが、ネタに触れるしごまかしておこう)。
ちなみに2ドル札への変化を諦めるのであれば、細工は不要になる。
個人的にはダニエル・ガルシア氏がやっていた、指輪の折り紙に変化するやつの方が好きかなーと。
Ticket Please
Joshua Jay氏の「Prediction Piece」のKyleバージョン。
「Prediction Piece」はDVD『Unreal Disc3』DVD『CLOSE-UP UP CLOSE vol.2』書籍『マジック・アトラス』なんかに収録されている。
原理的にはほとんど変わっていないが、なんというか「Prediction Piece」というよりも、北原禎人氏の「PLP」(書籍『The Surgical』収録)の方に近くなってはいる。
元のネタが良トリックなので特に語ることはない。映画の半券を使うというプレゼンテーションはいいですねーと。
それよりも、解説で喋っている内容から察するに、大量の半券ちゃんと映画を見て入手してきてるっぽいのがジワる。
Emergency Fund
ギミックの作成が必要だが、変化後は色々と検め可能。
カードマジックの技法がある程度出来ないと綺麗に見せるのは難しい。
お札をチョキチョキする必要があるのと、最初に見せる紙幣はフィルム内に入ったままからスタートになるで、予言の紙とかを変化させるような使い方のほうが良いような気がしないでもない。
Invisibly Triumphant 2.0
デックを裏表混ぜた後、観客に1枚言ってもらうだけでそのカードを残して揃うという順番で現象が起こる。
同名タイトルのバージョン違いトリックがDLCで存在しているようなのだが、実演映像を見る限り全く違う原理に見える。なぜ名前を変えなかったのか問いただしたい。
2種類のフォールス・シャッフルが解説されているのだが、フェロー・シャッフルと、オーバーハンド・シャッフルに見せかけたものが解説されている。
フェローの方はクラック・シャッフルとか言われてるやつと同じ(何で見たかなぁ・・・思い出せない)なのだが、確かマイケル・クローズ氏だったと思うが、パーフェクト・フェローをしようとして噛み合わせが上手く行かなかったとき、何度もやり直すのでは無くて一度この手のフォールスを行ってから、再度噛ませる方が自然に見えるで。というアドバイスをしていた気がします。
オーバーハンドの方はオーソドックスなものなので特筆することは特に無いですけど、ダニ・ダオルティス氏のDVD『RELOADED』の中でトライアンフの中で行うオーバーハンド・シャッフルについての話をしていたので、合わせて観ると楽しめるんじゃないかなーと。
「観客に言ってもらったカード」を残して揃う。という部分を抜きにしても、細かなサトルティが効いてるし、上手いことまとまっている良い手順だと思う。積み重ねられたサトルティは他の手順にも活かせるだろうし、スタンドアップでも演じれるので見ておいて損は無いと思うかな。
Invisible Phantom
あーなるほどなぁーという組み合わせのトリック。
これはあれだ、ジョシュア・ジェイ氏の名作「Inferno」と「Phantom Deck」を組み合わせた手順だ。
この2作品では使われない用具も必要になるが、入手方法というか「このトリックを買うと手に入るで」という事を口頭で述べている。有名な作品だし現在でも入手可能。
「Inferno」はセリフを上手いこと演出と絡めて使っていたのだが、今回の「Invisible Phantom」では演出の都合上同じセリフ回しが使えず、Invisible~の現象に合わせて変更している。
合っているとは思うのだが、やはり「Inferno」でのセリフ回しに感心した身からすると、この辺りの変更は少し弱くなってるなーと思ってしまう。
とはいえ、強烈な現象ではあるので気に入ればぜひ。といったところ。