INSCRUTABLE by Joseph Barry
2013年に発売されたジョセフ・バリーの2枚組DVDを、日本語翻訳して1巻と2巻に分けて発売したものの2巻「ブルー」のレビュー。
前回の記事へのリンク先も一応貼っておきます。

インスクリュータブル:ブルー ジョセフ・バリー(スクリプト・マヌーヴァ)
*Fantia・Creatiaから都合の悪い部分はカットしています
総評的な
大雑把な印象は1巻と同じで、カラーチェンジのようなビジュアルな見た目のトリックは少ないが、マジシャンが見ても不思議なカード当ての類が多め。というところは変わらない。
ただ付け加えるならば、1巻にあったトリックにスライトを加えていたり応用したりと、少し捻った感が出てきている。
またギャンブル演出のトリックや関係するスライトが多く、観た後に「この巻は全部ギャンブルトリックかぁ」と勘違いするほどでした(実際は違う)。
ちなみにですが、わたしは「ジャズ・ギャンブリング・デモ」と「ストリップ・アウト・シャッフル」が気に入りました。
個別に
LLLピーク
観客の選んだカード2枚を当てる。
1枚はピーク、1枚はフォースのような形の、即席で出来て難度が非常に低いセルフワーキング。
これを見ているのと同時期にアラン・アッカーマンのレクチャーを見ていたのだけど、非常に良いカット・フォースのヴァリエーションをやっていたのだけどそれと似ていて、プラスでもう1枚当てて且つデックが崩れない(トップとボトム位置が変わらないの意。アッカーマンのはカットされた状態になる)のが利点かなと。ただ錯覚はアッカーマンさんの方が強い。便利な技法だと思います。
ハミリー・フォースというトップカードのフォースも解説されているのだけど、リー・アッシャーのルージング・コントロールのような技法が好きな人にはかなり刺さると思う。難易度も大分低く実用的。
Lee Asher『Losing Control』日本語版(教授の物販)
センター・ディール
適当に抜き出した5枚のカードを真ん中から配る「センター・ディール」を使って集めると宣言してデモンストレーション。その後、最初に観客が選んだ数字のフォー・オブ・ア・カインドも集まっている。
完全即席で出来るトリック。マイケル・ウェバー作品の改案らしいがそちらは未見。デモンストレーションで使うために取り出すカードは規則性を作れず、一般観客に見せるような雰囲気ではなく、マニアがマニアに技法を見せるときのようなあまり品の良くないカジュアルさがある。これを人前で上手くショーアップするのは中々難しそうだなーと。
ダイアゴナルパームを上手くなるための練習法が解説されてるので気になる人はそれも。
スタンダップ・ロイヤルフラッシュ/エース・セレクション
4人の観客がストップを掛けた場所のカードとマジシャンが選んだ1枚のカードをめくるとロイヤルフラッシュになっている(一段目)。
4人の1枚ずつ引いてもらうと全部A(二段目)。
『レッド』に収録されていた「シンプル・マス」にセッティングと技法を足して、出来ることの幅を広げた作品。あまり動画向けではない対人向けトリック。一段目は良いと思うのだが、解説でトップにあるセットが顔を出さないようにするための方法について一切言及しないので、初心者なんかが見ると意味が分からなくなるような気がした。
二段目は、使い所はちゃんと考えたほうが良いんじゃないですかと思う次第。よく力量を誇示するためにバー・マジシャンがやりがちだけど、乱用しすぎて素人にすらバレてる人が多い。
ほとんどのマジシャンは勘違いしてるだけでセンスを持ってないんだから、頭をもう少し使いましょうよと思いました。
ジャズ・ギャンブリング・デモ
セカンド・ディールのデモンストレーションから、観客のストップを掛けた位置や出来ていたパケットのトップをめくると全部A(一段目)。デックをシャッフルしてもらい、スペード以外のAをデックに戻した後、カットしながらスペードの2からKまでを全部取り出していく(二段目)。
セットは覚えやすいが、技法は色々と必要なので多少難易度は高め。
セカンド・ディールのデモンストレーションがスタックを生き残らせるための策略に使っているのが賢いなぁと。観客が混ぜた後に二段目の現象を演じるので強い。
二段目のスート・アピアランスについて、カードの出し方は好きな方法を~ということで詳しい解説はないので(『レッド』で使っていたこの技法とかみたいな説明はある)、ある程度自分で考えれる人じゃないと演じるのは難しいけど、練習好きには良いと思います。
当然、他のマジシャンが発表しているスート・アピアランスにセカンド・ディールのアイディアを組み込むことも出来ます。
フォー・ストップ
観客が配るのと止めた位置にあったカードの残りのフォー・オブ・ア・カインドを即座に出す。
フルデックのセットアップが必要。ちょっと不思議にオープナーでフォー・オブ・ア・カインドを揃えたいならどぞ。わたしはしない。
フェアー・ディール
観客にカードを配ると、一人の観客の手にフォーカードが揃っている。
本体はリフル・シャッフルを交互に噛ませるためのコツ。すでに出来る人間からするとアドバイスになっているのかどうかちょっと分からない。
トリックそのものについては、リフル・シャッフルするときに毎回トップが変わっていなくても気にならないタイプの人間であれば使えるのではないでしょうか。
ギャンブリングにこだわってる人が見たら、多分キレ散らかす。
アウト・オブ・ディス・ワールド
観客が混ぜたデックを観客が自由に分けると赤と黒が綺麗に分かれている。
見た目はフェアなアウト・オブ・ディス・ワールド。
でもやるかと聞かれればやらない。同じ原理のOOTWにRoberto Mansillaの「Out standing」があるけどあっちの方が上質。バリーの手順はクロースアップ用にチューンされたようなハンドリングではあるものの、懸念点についての言及がほぼなく、人前で手品してたらよく突っ込まれる事象について、観客はそんなことに気づかない。なんて断言されてもねーと。
実演だとやってる保険掛けた動きを、解説ではそんなことなかったみたいな感じもうーん。後、合いの手で入る質問が的外れで、今回は雰囲気でやってんの?もしくは、ほんとは解説したくないから適当にやってる?と突っ込みたくなる部分が多かった。
解説の通り受け取るならば、考えが浅すぎるトリック。動きを信じるならば、もっと考えてることあるけど隠してる感じ。
OUT-STANDING by Roberto Mansilla(Vanishing inc.)
バリューズ
観客に2枚のカードを覚えてもらいデックに戻す。覚えたカードの数字の分カードを配ると覚えたカードが現れ、さらに残ったもう1枚の数字の分配ると残った1枚も出てくる。
完全即席で出来るトリック。
セルフワーキングと言い張っているけど、キーの作り方とか色々とスムーズに行うのは難しいと思うなー。ダニとかがやりそうなさりげない動きでのシークレットムーブが好きな人はどぞ。
マッチング・ザ・ポーカー・ハンド
観客の選んだカードを含めると出来るポーカーハンド(フォー・カード)を取り出す。その後5枚がロイヤルフラッシュに変化する。
マジシャンVSギャンブラーのように、一見関係なさそうなカードを取り出して置いていき、最終的には変化しているのでとても不思議だと思います。
ただ、最初に取り出すフォー・カードはロイヤルフラッシュを構成する10JQKAを避けるようにとのことだけど、最初に「君が選んだカードを含んだポーカーハンドを出すよ」「これがそのカードを含む中で一番強いかな」といったセリフを言ってるので、10JQKAを使ってフォー・カード出してからロイヤルフラッシュの方が綺麗に構成される気がするんだけどな。
メモリー・ポーカー
観客が覚えたカードを当て、候補として出していた4枚をめくると強いポーカー・ハンドになっている。
完全即席で出来るトリックで指先のスライトは必要としないけど、場数踏んでないと難しめ。ケース・バイ・ケースで観客にする質問をその場で即座に考えないといけない。クラシック・フォースをセルフワーキングと言い切るなら、これもセルフワーキングと言い切って良いと思うんだけど言わないのんなぁ。
こういう組み合わせの中だと、このカードは選ばれにくい。というような話は興味深かった。
スペクテーター・ポーカー・ディーラー
観客が混ぜてポーカー用に手札を配り、カードの交換も観客にしてもらうが、主役の観客の手札には4Aが揃っている。
ダニ・ダオルティスの『UTOPIA』のDisc4に収録されている「Missing Player」のヴァリエーション。端から見ていた(ダニの手順)ときは「ふーん」くらいの感想だったけど、実際に手伝わされる観客側としてダニの手順を演じられたときは「おーーなんでだー」となった経験を踏まえると、バリーの手順は1人の観客に全部やってもらう~といったコンセプトだと明言していたことを考えると、演出面では弱くなっているような気がします。
ただ、ダニがどうやっていたかは覚えていないけど、このトリックの根幹の部分の操作は綺麗に紛れておりとても良かった。スライディーニ味を感じましたことよ。
ダニの手順、今度確認しよっと。
Utopia by Dani DaOrtiz(Vanishing inc.)
メンタル・セレクション
観客が見て覚えたカードをカットして出す。
surefireではないガバガバな方法論だけど、割りと嫌いじゃない。
マジシャンは「そんなわけない」と思うが、観客は「こうなんじゃ?」と想像する手法そのままな気もするけど、ジャジーに手品する人は覚えておくと役に立つよね。
ディスカッション:ストリップ・アウト・シャッフルとテーブル・ファロー・シャッフル
タイトル通り。ストリップ・アウト・シャッフルの方は珍しいテーブルでリフル後に、そのまま揃えずテーブル上でウォーターフォールするフォールスシャッフルになっている。意外とこのタイプあんまり見ないですよね。
テーブル・ファローはノーコメントで。普通以外のコメントが思いつきません。