所感:「KAYFABE Disc2 SUMMER – Max Maven」

2020-06-20

KAYFABE – Max Mavenとは?

メンタリスト界の大御所、Max Maven(マックス・メイビン、メイヴェンとかメイヴィンとか表記揺れが多いのはご愛嬌)氏の4枚組DVD(日本語字幕あり)。

詳しいことはDisc1のときに書いたことを参照して欲しい。

今回は4枚組DVDのうち、「SUMMER」と名付けられたDisc2の感想文。

このDiscはレギュラーのトランプを使ったメンタル・カード・マジックをメインに収録しているようである。

所感

ZEN POKER

観客が自由に書いたトランプ(その観客しか知らない)と実物のトランプを使い、特殊なルールのポーカーを行う。
最終的に、そのカードが当てられる。

これは不思議。

まったく原型を留めていないように見えたが、とある「子供向けマジックセットとかに必ず入っている道具」に使われている古典的なトリックを応用した作品。

観客に質問することになるが、その数4回。
ポーカーのようなゲーム(ようであってポーカーではないため、観客がポーカーのルールを知らなくても大丈夫)に絡めることによって、質問するという行為の不自然さを上手いことカバーしている。

ただ、フォローする方法も解説されているものの、Surefireではないサイコロジカルなところに頼っている部分があり、もしかしたら人によってはそこが引っかかる部分かもしれない。

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ゆき
個人的にはサイコロジカルな要素も足すことで、古典を見事に生まれ変わらせた例だと思った

OUT OF MINE

観客が見えて心に思ったカードを当てます。

バーノンの名作「アウト・オブ・サイト アウト・オブ・マインド」のマックス版改案。

基本的な原理は変わらないが、マックス流のエッセンスが注ぎ込まれている素敵な改案である。
原案(や一部の改案)にある「観客への質問」を演出で上手く消し込んでるのとか良いですね。

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ゆき
今度からこれやる

バーノンの「アウト・オブ・サイト~」系の改案作品だと、Harvey A.Berg(ハーバイ・バーグ)氏の『インターセプト』や、脇坂将太氏の「Far from Eye, Far from Heart」(書籍『天変地異』収録)なんかを思い出しますが、印象に残ってる作品ってあります?

SINGLARITY

2人の観客に手伝ってもらい、1人目の観客にカードを見て覚えてもらい、2人目の観客にはカードを引いてもらう。
1人目の観客に覚えたカードを言ってもらうと、2人目の観客が引いたカードと同じである。

1人目の観客に覚えてもらう方法は、好き嫌いの分かれる方法。わたしはあんまり好きじゃないしやらない。即席で春に咲きそうなあれを作るやつだ。

このパートの本体はクラシック・フォースの解説である。

クラシック・フォースが解説している他DVD(Paul Daniels氏の『BRAVURA』や、Dani DaOrtiz氏の『UTOPIA』)を挙げ、今回マックス氏が教えるフォースとの違いなんかも説明してくれる。

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ゆき
一概にどれが良いとは言えないので自分で決めるんだ

また、よくある練習法に加え、さらに良い方法としてローリー・アイルランドというシカゴのマジシャンのやっていたスリーピング練習法を例に上げ(バーノンも似た話をしていたなぁ)、ドM向きの練習方法の話をしてくれる。

絶対に失敗できないときにこそ、クラシック・フォースやれ

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ゆき
真理かもしれない

TERRITORY

5枚のカードの中から1枚を心の中で選んでもらい、それを当てる。

なんというか「メンタルマジックっぽい」原理です。
良いですね、こういうのでいいのです。こういうので。便利だし不思議だし。

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ゆき
忘れがちですけど「カードを当てる」って不思議なことなんですよね

当て方はかなり自由にやれるのでお好みの方法で。
ここはマックス氏繋がりでDVD『マルチプリシティ』で勉強し、駄目押しに使ってみるとかいいんじゃないでしょうか。

ROUNDABOUT

観客の選んだ3枚のカードを当てる。
1枚は表を見ず抜き出して観客に持っていてもらい、2枚は頭の中で思ってもらう。

脳みそがオーバーヒートしそうなトリック。

本体は、クロッキングの解説だと思う。

カードゲームなどでは良く?出てくる技術ですが、マジックではクロッキングと呼ぶんですね(知りませんでした)。

さすがに概要ですらネタバレになりそうなので、クロッキングはここで覚えれますよ―くらいの情報で勘弁してください。

ただクロッキングは中々使い所が難しい技術だと思いました。
氏は若い頃最速16秒くらいで出来たと言っていましたが、それだけの速さでやるのも当然大変ですけど、観客は無変化の状態を長時間我慢できません、許されるのは大体8秒から10秒だと言われてます。

クロッキングに加え、その間同時に観客の緊張感をコントロールするのは中々大変だと思いました。
メンタル系であれば、考え込む、黙り込む、といった行動が演出になってカバー出来そうですが、ただのカードマジックでやるとすると中々しんどい。

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ゆき
スライト・オブ・ハンドとは違う難しさのある技術だと思いました

インタビュー 2/4

マックス氏の特徴的な髪型の由来から始まり、DJを辞めてからマジシャンとして活動し始めてからの話がメイン。

髪型を指定したとき美容師に「明日営業が始まる前に来て欲しい」と言われたことを始めとする、「頭がおかしい」と言われたエピソードや、マックス・メイビンとフィル・ゴールドステイン2つの名前を使い続けたことの後悔・片方の名前との決別の話、パケット・トリック流行期の話、DJを辞めるときに送り出してくれた恩人との再会と転機の話など、これからプロとして活動することを考えている人には何か感じる部分があると思います。

パケット・トリック流行時の話に出てくる、
「今ここに爆弾が落ちたらニック・トロストが儲かる」
にはクスッとしました。

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ゆき
この頃パケットトリックと言えば3人の売れっ子クリエイターがいて、そのうちの2人マックス氏とラリー・ウエスト氏が会っているときにラリー氏が言った言葉

最後に

レギュラー・デックを使ったメンタルマジックばかり収録されているので、広い層に受け入れられそうだなと思いました。

収録されているトリックはどれも不思議

ただ、Surefire(確実に成功する)ではない部分や、過剰な脳内ワーク、即席サ○ラ等、ガチッとしたものを好む人には向かないところもあった。

ある程度、ジャジーにカードマジックの手順をこなせるようになった人に合うのではないでしょうか?

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ゆき
あ、作品の歴史的背景なんかについての話も健在ですよ!

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