所感:MAJION LIVE LECTURE ―Daisuke Yoshida―
- 1. MAJION LIVE LECTURE ―Daisuke Yoshida―とは?
- 2. 所感
- 2.1. 導入:「作品を発表」することについての3人のスタンス
- 2.2. 箱からカードを取り出す
- 2.3. マーローのエース・オープナー
- 2.4. カード当て時の示し方
- 2.5. パームについて
- 2.6. カード当て時の示し方(サカートリック編)
- 2.7. デックのひっくり返し方
- 2.8. 質問:パームについて
- 2.9. パームトランスファー
- 2.10. 野島氏の質問:マーローのエース・オープナー
- 2.11. ブレイクについて
- 2.12. トップチェンジについて
- 2.13. ピンキーカウントの話
- 2.14. クラシックパス
- 2.15. タイミングについての話(トップチェンジの話に戻って)
- 2.16. 緊張について
- 2.17. 練習について
- 2.18. タッチについて
- 2.19. エルムズレイ・カウント
- 2.20. 質問:シャッフルするときに考えてること
- 3. 最後に
MAJION LIVE LECTURE ―Daisuke Yoshida―とは?
2019.09.22に行われた、MAJION主催のLIVE Lectureの吉田大介回。
氏は関東を若手を中心に支持を集める、関東随一のアマチュア研究家である。
購入ページは下のリンクからどうぞ。
所感
・初心者・中級者向け(自称)とのことだが絶対違う
・基礎技法は習得済み前提
・手がめっちゃ綺麗
・聞き手に野島氏・堀木氏
・カードマジックの理論
・ネタの解説は無いに等しい
導入:「作品を発表」することについての3人のスタンス
吉田氏の紹介や簡単な雑談。
演じてる作品が「発表したときの手順」と「現在の手順」で変わるよね?ということについて少し話しています。
芸人・小林賢太郎氏の著書『僕がコントや演劇のために考えていること』の中の「〆切とは、完成品の更新をやめるときのこと」という章があるのですが、その内容がこの3人のトークに混ぜても成立しそうな話だったことをなんとなく思い出しました。
箱からカードを取り出す
箱に入ってるトランプを取り出して、ディーリングポジションに持つまでの動きの流れを解説。
その流れから、David Williamson(デビッド・ウィリアムソン)氏のトリック「Torn & Restored Transpo」の導入部分を例に持ち出してアディションの解説を始めるのだが、このトリックのことを知らないと初見では一瞬、何言ってるの?となる可能性がある。
少し見てもらえば何を目的にした動きかは分かると思うので、初見で戸惑った人は分かった時点で一旦戻して見直すのが良いと思います。
(David Williamson(デビッド・ウィリアムソン)氏のトリック「Torn & Restored Transpo」はDVD『RIDICULOUS』(日本語字幕あり)、DVD『スライト・オブ・デイブ』(日本語字幕版あり)、書籍『WILLAMSON’S WONDER』(日本語版あり)に収録されていて、媒体によって多少名称が変わる)
マーローのエース・オープナー
やり方の解説がされる唯一の演目。4つにカットしたパケットのトップからエースが出現する。
パームしたカードをデックにアディションする際の工夫、動きとセリフの整合性や、一致した4枚のカードをめくるテンポについての話もあり、類似の手順を行っている人には得るものが多いでしょう。
(少し後に野島氏から質問があります)
書籍『ルポールのカードマジック』(著:P.ルポール,翻訳:高木 重朗)に収録されているトリック「四重の不思議」内で用いられている策略について少し触れられており、興味を持った人は調べてみるといいでしょう。
絶版本ではありますがオークションで安価で出品されているのをよく見かけるので入手は比較的簡単でかつ、歴史に名を残す名著である。
解説の中でTaryl氏のエースオープナーの話が挙げられるのだが、後にTaryl氏のLIVE Lectureで解説されることになる。
カード当て時の示し方
「1枚取り出して」→「何のカードが観客に聞いて」→「観客が答える」→「当たっているのを見せる」という流れをする際の効果的なテンポについての話。
よくいるおっちゃんマジシャンdisりがあり、心当たりのある人には耳が痛いかもしれません。
パームについて
大まかに3種のパーム解説が行われる。
アードネス・ボトムパームの解説。
細かいコツの話も多数あり、未習得の人であればここで覚えておくと役立つ。
ロウイ・パーム(ヒューガード・トップパーム)の解説。
結局どっちの名前なのだろう?という話が少し挙がっていたが、Guy Hollingworth(ガイ・ホイリングワース)氏の書籍『Drawing Room Deceptions』ではDr.Loewyが考案してHugardが有名にして「ヒューガード・トップパーム」としてよく知られている「ロウイパーム」を使う、という表記を見たことがあるため、わたしはロウイパームが本名だと思っている。
トップパームの解説
ここでもよくやりがちな点について色々触れられます。
吉田氏が憧れている、よくパームをするマジシャンはBebel(ベベル)とJohn Carney(ジョン・カーニー)だそうです。この2者は間違いなく良いマジシャンなので気になれば演技を観てみることをおすすめします。
またパームについて、下記資料の内容について話している部分があります。気になる話があればそちらを参照しましょう。
『パワー・オブ・パーミング』と『ワーカーズ』の2本がひとつになったもの。
・書籍『アスカニオのマジック』
日本語版は長らく絶版になっていたが、2019年時点では在庫が発掘されて購入出来る状態になっている。
・ロベルト・ジョビーのDVD『カードマジック・マスタークラス』Disc4「Palm」
全巻セットになっているものとバラ売り版がある。日本語字幕等はないので注意。
カード当て時の示し方(サカートリック編)
どういうテンポだと失敗に見えるのかについての解説。
デックのひっくり返し方
デックの裏表をひっくり返す動作と目的についての話。
カードマジック「オールバック」についての話が展開されます。
その中でとあるオールバックに用いられるムーブについて話していて「誰のものだったか忘れてしまったけど・・・」とありますが、Edward Marlo(エドワード・マーロー)のサトルティだとBill Malone(ビル・マローン)が何かのDVDの中でオールバックの解説の際に言っていた気がします(自信ありませんが)。
また、今田航平氏のノート『ANIMALTRAIL』の中で、さらに一手減らしてスムーズにしたムーブが解説されているので興味があれば。
質問:パームについて
パームの際に両手をデックに掛けなくてはいけないときのカバーの動作について、リフルのような目立つ動作を避けたいときの代案は何かあるか?という質問に答えます。
パームの練習に適したトリックとしてDavid Williamson氏の「The Memory Test」を挙げています。
この後トップチェンジの話になった際にも、このトリックを知っている前提で話が展開されていくため、このトリックは知っておいた方が良いです。
DVD『RIDICULOUS』(日本語字幕あり)、DVD『マジックファーム』(日本語字幕版あり)に収録されています。
パームトランスファー
パームトランスファーの簡単な解説が行われますが、さらっとです。
基本的にはバーノンのパームトランスファーですが、少し動作が変わっています。
パームしたカードを反りにくくする工夫について触れられています。
野島氏の質問:マーローのエース・オープナー
マーローのオープナーの際に野島氏が疑問に思ったことを質問しています。
ここでも裏で色々考えられています。
ブレイクについて
ブレイクしているときに「線」が出来る理由、限りなく見えにくくなるコツについて話します。
意外と言われないと気づかないと思うので有用です。
また右手でビドルグリップに持って親指でブレイクすることについての話もあり、こちらも知っておくべきでしょう。
トップチェンジについて
David Williamson氏のトリック「The Memory Test」を知っている前提です。
カバー・ルックアップについて多く触れ、タイミングについてセリフ込みの解説もされており、トップチェンジのコツについては決定版と言えるほど色々詰め込まれています。
トップチェンジのやり方そのものについてはあまり触れないのでそこも知ってる前提になりますね。
ピンキーカウントの話
ピンキーカウント中に黙るのよくないよね。そのあたりの工夫等。
ダーウィン・オーティスに見られたら怒られます。
クラシックパス
やり方はすでに知っている体で進むクラシックパスのコツの話。
スプレッドパスのコツも解説されていますが、これもすでにやり方を知っている前提に話が進むので注意です。
「ドリブルパスをする際に意識すること」の話もありますが、これも知ってる人向けです。
タイミングについての話(トップチェンジの話に戻って)
「The Memory Test」の導入のアイディアについてと、トップチェンジの話に戻り総括等を。
緊張について
吉田流緊張しているときの対処方法。
緊張の原因の理解と物理的な対処法、そもそも緊張しづらくなるための精神的な心構えについて話します。
マジオンライブレクチャー – TAKAHIRO回のときにあった緊張しにくい精神論にも触れています。
練習について
パームやパスといった高難易度な技法の練習の仕方についてのアドバイス。
フランシス・カーライルの「ホーミング・カード」について、練習曲として薦めるには意外と問題があると話してますが、このトリックはカードが2回ポケットに移動するカード・トゥ・ポケットの手順であり、書籍『STARS OF MAGIC』、書籍『カードマジック事典』等色々なものに掲載されています。
野島氏がタマリッツのポケットに入れるやつみたいな話をしていますが、これは
Juan Tamariz(ホワン・タマリッツ)氏のDVD『ホアン・タマリッツ 2ndレクチャー』(日本語字幕版あり)の中で観れたような気がします(ちょっとあやふやなので間違っていたら修正します)。
タッチについて
タッチとはなんぞやみたいな話と、こういう動きにすればこうなる。といったことを例を交えて教えてくれます。
エルムズレイ・カウント
エルムズレイ・カウントをテンポを変えて行うことの解説。
エルムズレイ・カウントそのものの解説はなく、すでに知っている人向け。
Tommy Wonder(トミー・ワンダー)氏の書籍『Books of Wonder vol.2』の中にあるカウントについての話が出てくるが、洋書のみなことと手に入りにくいこととで、テンポを変えることの狙いが分かりにくいかもしれない。
意味合いは異なるがTommy Wonder氏のDVD『ワンダライズド』(日本語字幕版あり)の中でも、カウントについて話してる部分があるので、それを観ると重要性が理解しやすくなりそうかなと感じた。
Rene Lavand(レネ・ラバン)氏のワイルドカードの手順の話が出てくるが、DVD『Maestro』Disc.3(4枚組DVD日本語字幕あり)に収録されているトリック「Pygmalion」のことなので、気になる人はそちらを参照。
質問:シャッフルするときに考えてること
オーバーハンドシャッフルをする際の注意点等について話す。
上手い人としてGabi Pareras(ガビ・パレラス)やRoberto Giobbi(ロベルト・ジョビー)の名が挙げられている。
またBill Goodwin(ビル・グッドウィン)のオーバーハンドシャッフルの操作が通常と違うことについて話していたりする。
リフルシャッフルの話も少々される。
最後に
非常に珍しい理論メインのレクチャー。
カードマジックのレベルを一段階上に上げたい人は観ておきたい回。
特にトップチェンジの解説については、決定版とも言えるほど濃い内容だったと感じた。
初心者・中級者向けという触れ込みだったようだが、ちょいちょい突っ込まれる情報を理解するには中級者くらいでは少し難しいようにも感じた。
ただ、今回のレクチャー内で挙がった資料はどれも良いものばかりであるので、分からないものがあれば調べてるといいだろう。
最後にミゲル・ゴメスのDVDがおすすめされていたが、技法を使うことのハードルを下げるという今回のレクチャーと同じコンセプト「セミテクニカル」という概念について語られている。
今回のレクチャーがためになったと思うのであれば、ミゲル・ゴメス氏のレクチャーも同様に嗜好に合うのではなかろうか。