所感:「Secret Code:2012 by 新沼研(ASIS)」
Secret Code:2012 by 新沼研(ASIS)とは?
今はなきマジックサークルASIS(A Study In Secrets)の新沼研氏が2012年のレクチャーに合わせて作った40pほどの小冊子。
4つの作品が収録されておりすべてカードマジックで、氏曰くこのノートの価値の半分はNotes(考察部分)だとのこと。
所感
Everything or Nothing
こう現象を書くと、エニー・ソート・カード・アット・エニー・ナンバーっぽく聞こえるけど、そんな綺麗なものじゃない。
観客にひっそりとカードを持ち上げてその枚数を数えてもらった後、並べたカードの中から持ち上げた枚数と同じ数の位置にあるカードを覚える、とかそういう操作が入る。
「They Tell You Nothing」というトリックの改案ということだが、正直「こうするとこういう面で分かりやすいで」みたいな原案者ですら実はやっていたかもしれない小さなコツが大々的に書かれているだけである。
ノートだから許されるものの、作品集にこんなのが載っていたら助走をつけて右ストレートでぶっ飛ばしたいレベルである。
とはいうものの、どの点が変更点なのかきちんと明記されているのはありがたい。
だが、わざわざ別の名前を付ける必要性は感じない。
数理的な原理を使ったマジックが好きで、この原理を知らない人は気にいるかも知れない。
氏曰く、お前はもう騙されている系トリック。
No Palm Transpocket
ポケット・インターチェンジをノーパームで達成するというもの。
例によってダロー氏のライジング・クライム・ディスプレイに依存している。
at the table live Lectureのジョン・ガスタフェロー回であった「Quick Pocket」というトリックと大体同じ流れであるが、ガスタフェロー氏の手順が1回パームを行うのに対し、こちらは完全にノーパームなのでスライト的には楽であり、見た目も割とすっきりしている。
ガスタフェロー氏のと比較すると、こちらの方に軍配が挙がるような気がする。
欠点は1枚ポケットにカードが残ることであろうか。
あと、研究者気質の人にありがちな、無駄にうざいあらためがちょっと気になったくらいである。
総合的には良手順だと思う。
Final Destination
ちょっと珍しいギミックデックを使う。
いわゆるラスト・ダイス・トリックとかラスト・カード・トリックとか言われているやつ。
ウケるとは思うが、正直微妙。
氏が発表しているトリック「ANOMALY」とかの方がよっぽど良い。
*わたしは「ANOMALY」を魔改造して演じているのだが、それが基準。「ANOMALY」が良いトリックか?と聞かれれば「いらん」と答える。
最後の「消去」のところで使われる諸々の策略、他のカードのあらためや選択の部分が中途半端のままである。
謎の「~の数だけ指を移動させて」やらフォールス・カウントに頼りたくは正直ないだろう。
このトリックのためのギミックデックが付いてきたのだが、これまでまったく使う機会がなかった。
しかし、2020年にめでたくMark Elsdon氏の「Un CANNY」用に改造されました。
Nepenthes
クライマックスでは観客のサインしたカードの裏の色が変わる。
最終的にジョーカー2枚と、裏の色が変わった観客のサインカードの、計3枚を取り除けばレギュラーになるのでそこは便利。
サンドイッチの瞬間や、観客のサインカードの裏が変化するところはかなりいい感じかもしれないが、観客に選んでもらう方法が悪い意味で気になる。
ここ、パトリック・クンのミラー・フォースが使えるので、そちらの方がクリーンに見えると思う。
最後に
入手難易度と内容を考えると、わざわざ読むまでもないかなと。
これでしか読めないアイディアの類はないので、ASISコレクター用のアイテムとかそんな感じでしょう。
ただ、何を狙って原案のこういうところをこう変えた。ということがきちんと書かれていたので、研究気質の人には助かるんじゃないかな、こういう書き方。わたしは読みやすくていいと思いますよ。
フォントも大きくて読みやすいのもいいですね。
このフォントサイズにしたら、ハードカバーの本でもすぐ書けそうです。
ちょっと煽りみたいになりましたが実際問題、めっちゃ多い画像とか、無駄に開いてる行間とか、ブログ記事みたいで、本を読み慣れない層にはありがたいところかなと。