所感:「ユージン・ゴーズ・ビザー by ユージン・バーガー」

ユージン・ゴーズ・ビザー by ユージン・バーガーとは?

Eugene Burger(ユージン・バーガー)氏のDVD。2011年にスクリプト・マヌーヴァ社から日本語字幕版が発売されている(翻訳前は2004年発売)。

このDVDで取り上げられている「ビザー・マジック」というのは「オカルト風の演出で演じるおどろおどろしいマジック」のことだが、内容はこのビザー・マジックの演技を通して演出や表現を考える、といったものになっています。

所感

イントロダクション

「ビザー・マジック」というものがどういったものかの説明

ビザー・マジックの簡単な説明や歴史、ビザー・マジックと通常のマジックとの違い、ビザー・マジックを演じるマジシャンが観客に対して負う役割が、普通のトリックを演じるときと異なる話など。

「マジシャンの役割」という考え方は、ビザー・マジックに限らずどんなマジックでも考えておくに越したことはないと思う。

ビザー・マジック以外に「メンタリズム」「ギーク・マジック」(ビザー・マジックと大体同じだが、舌に針刺したり、針を飲んだりみたいなもっと気色悪いマジック)なんかを演じる人であれば、適当に演じていても役割が自覚出来そうだが、それ以外のオーソドックスなマジシャンはこの役割がふんわりしている人が多いように見える。

演技の上で念頭に置いておくと、演技を良くするひとつの要素になるんじゃないかなーと思いました。

マジシャンとの夕べ

ちょっとしたユージン氏の哲学的な話。
必ず訪れる「死」の存在があるから、人は文化・科学・芸術といったものを進歩させてきた。みたいな内容。

いつわり

現代のマジックは毒気を抜かれ軽い娯楽になっている。
魔法が信じられていた時代のマジックと、大衆娯楽になってしまったマジックの違いはどこなのか。という感じの話。

上手いことまとめられないが、色々と考えさせられる内容。

そういえばマヌーヴァさんから『本物の魔法』っていう本が出ていますが、この辺りにも通じる内容なのでしょうか・・・(読んだないんだ、すまねぇ)。

ヒンズー・スレッド

現象インド神話を演出にしたヒンズー・スレッドのパフォーマンス。
細かく千切られた糸が復活する。

解説はなし。トリック自体はクラシックな手法・・・だと思う。
何に解説されてるかなぁ・・・大体どんな手品本にも載ってるイメージあるけど。

古典の中の古典だけど、やっぱり不思議なんですよね。

Right Caption

ゆき

復活系のトリックは、人の持つ「死」の恐怖と結びつくせいか印象が大きいのかなぁ

永遠の沈黙

「死」と芸術についての話。

すぐ終わるので特にいうことはない。

ホーンテッド・デック

現象カード(トランプ)を使った演技と、タロットカードを使った演技の2パターン収録。
デックが動いて、1枚のカードがひとりでに飛び出してくる。

原理はどっちも同じ。
タロットを使う際の演技は観客にカードを選んで貰う必要がなく、ホーンテッド・デックの現象の、動く部分にフォーカスして演じる事が出来るので、演出案のひとつとしてこういうのもありだな、と思わされたりしました。

原理的にはインビジブル的な糸ではなく、ヒドゥン・スレッドを使う。

この手の手順だと、マイケル・クローズ氏の手順(DVD『アルティメイト・ワーカーズ Vol.2』収録)が一番好きかなぁと(ヒドゥン系の手順をあまり知らないが)。マイケルの手順はデックが完全にレギュラーに出来るので色々と楽だった(氏本人はメモライズド・デックを使っていたけど)。

コツや練習の仕方なんかもユージン氏が色々話してくれるので参考になる。

ただ、このトリックを目的にDVDを買うほどではないと思います。

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ゆき

どうでもいいことだが、ロウソクが倒れそうで観ててハラハラする

対談:アンドルッツィ

ビザー・マジックの大御所トニー・アンドルッツィとの対談。

マジックを「トリックによるショー」ではなく、ファンタジーを融合させた「魔法」として見せたい。という目的は良いなと思います。

観客の人数、場の規模による弊害。
この条件でだと魔法使いに成れる。というのはなんだが説得力があります。
・・・なんか人を洗脳するときの方法と似てる。紙一重なのかもしれない

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ゆき

マジシャンには、魔法を使える者と使えない者の二種類がいる

ブック・オブ・ゴースト(演技:ジェイ・イングリー)

現象たぶん、ブックテストのカテゴリーに分類される現象。
観客が選んだページの言葉を、降臨した霊が古い紙に言葉を焼き付けて表す。

実演のみ。
ジェイ・イングリー氏という若いマジシャンが演技してくれている。

誰がここまでやれと言った。とつい言いたくなるほど演出に全振りした演技。あとテーブルも浮く(フロテではない)。
舞台演劇のようなやりすぎ感を感じるが、振り切った演技がどういうものかを知る資料としては良いのかもしれない。

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ゆき

わたしはもうちょっと「抜いた」方が好みかな

レトリビューション

現象タロットカードを使った儀式によって、ジョージを呪い殺す。

実演のみ。
人を呪うという行為についてユージン氏が話しながら、ビザー・マジックを演じる。

ブードゥー・カード、って言ったらいいのかなこのプロットは。

怪談やホラー話とか盛り上がっている中で演じたら良さそうです。

最後に

なんとも評価しづらい内容だった。示唆に富む内容ではあるのだがどこか哲学的で難しい
ちょっとおすすめはしづらいかなと。

DVD『マジカル・プレゼンテーション』を観て興味を持ち、さらに深いところまで・・・と思った人は良いかもしれない

また、現代の基準で考えると、マジックを「魔法」のレベルとして演じるには『ゴーズ・ビザー』で語られるような考え方では合わなくなってきているように思える。演技に取り入れる前に上手く「調整」しないと駄目かなって。

ダウンロード版だと何故かかなり安いので、興味のある人はそこから購入とかがいいんじゃないかな。

あとは『本物の魔法』とかと合わせたら良いかもしれない。

ユージン・バーガー氏の教えを聞きたい人が最後に買う、氏のスクリプト・マヌーヴァ社製DVDだろうか。これを買うのであれば、まずは『グルメ』『リアル・シークレット・オブ・クロースアップ』『マジカル・プレゼンテーション』を観てからがいいと思うで。

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