所感:「マジック・オブ・ザ・ペンドラゴンズ」

マジック・オブ・ザ・ペンドラゴンズとは?

アメリカのイリュージョニストThe Pendragonsのイリュージョンを解説したDVDその1巻。

4巻まで存在しているが、日本語になっているのは1巻のみ

The PendragonsはJonathan Pendragon(ジョナサン・ペンドラゴン)氏とCharlotte Pendragon(シャーロット・ペンドラゴン)氏の2人からなる夫婦のイリュージョニストであった。

ジョナサン氏は体操選手・スタントマン・武道や剣術の講師を努めていたことがあり、シャーロット氏は体操選手・ダンサー・ボディビル(優勝経験アリ、割とガチ目)をしていた経験がある。2人共身体能力が常人離れしている部類の人間である。

50カ国以上でテレビ出演、ギネスブックに「最速のトランスフォーム・イリュージョン」として「Metamorphosis」という演目が記載されたりと、数多くの結果を残した。

しかし2012年に離婚。それぞれ別の婚約者と再婚したとのことで、2人を揃って見ることはもう出来ないようである。

所感

・「タネの秘密よりも、演者の動き方や見せ方の解説に主眼が置かれています」と紹介されているが、種や仕組みの解説は全く無いと思って良い。1からイリュージョンを学ぼうと思っている人はこれ注意。

2巻目からは日本語版はない

ヒンズー・バスケット

現象大きなバスケットに美女が入り、マジシャンはそのバスケットに次々と剣を刺す。でも美女は無事に出てくる。

イリュージョンを演じるとき、入門として適しているマジックとのこと。
バスケットに入る側、外で剣を刺す側の双方からの視点でその理由を話してくれる。

少しだけであるが「イリュージョンにおける7つの現象」っていうことも述べており、個人的にはそこに興味を持った。

マジックの現象分類について記事にしたことがあるが、イリュージョンだとそういう感じなんですねーと。ショーを組むときの参考になりそうです。

また、火を扱う際の注意点が話されるのだが、これはマジシャンからの視点ではなくもっと別の視点であり、この辺りの話は念頭に置いておきたい。

ここらのことが頭に無いマジシャンは経営者・運営とかからすれば使いにくい・仕事を頼みづらい、そう思われても仕方ないかなーと。

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ゆき

先輩「そんなの常識だろ」新人「知らんかったわ!!」って部類の内容だと思う

他にも道具を扱うときの注意点。
言われれば当たり前に感じるけれど、言われないと分からない系のアドバイスもある。舞台俳優なんかからすると当たり前のことなのかもしれませんけど、言われないと気づけないような細かなやつが多いです。

そういえば、イリュージョンでよく出てくるひらひらする布、フーラード(Foulard)って呼ぶんですね。覚えました。

スムーズなバスケットへの入り方を詳しく説明してくれようとはしているが、透明な入れ物とかじゃないとこれは伝わらないなーと。

種は知っていてすでに演じている人であれば分かりやすいのかもしれないけど、わたしはそうですねよく分かりませんでした。

すでに演目に取り入れている人が、演技をもっと良くしたいときに見るべきもの

カラー・オブ・エモーション

現象観客の想像した言葉を絵にする。

シャーロット氏の絵画スキルを活かしたトリック

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ゆき

絵心ない、わたしには無理

観客の思った言葉を読み取る方法は解説されておらず、ジョン・コーネリアス氏の「ソート・トランスミッター」とかを紹介してこれを使ってくれ、という程度。

解説は主に「どういう物を想像してもらうか」「画材の準備をどうするか」「描いてる時間をどうするか」といった点になっている。

このトリックはイリュージョンとしてだけでなく、クロースアップやサロンなんかでも余裕で演じれると思う。

それなりにコストはかかるが、描いた絵をお土産として観客に渡すことも出来るのでめっちゃ印象に残るでしょう。

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ゆき

絵が描ければ。わたしには無理

マジシャンよりは、絵が描ける人が行うパフォーマンスとして見たほうが発展しそうな気がする。

この演技ではクライマックスまで何を描いているか観客に分からないようにうまく行っていましたが、今流行りの3Dアートをリアルタイムで描くパフォーマンスであれば、その辺りの考慮が不要になり、さらに劇的に見せれそうでいいなーと思ったりしました。

また少しであるが失敗談・ミスを頑張ってリカバリーした話がされるので、これも参考になりますね。

シャドー・ボックス

現象紙が四方に貼られた空の箱を閉じて光を当てると影が現れ、中からマジシャンが紙を破って出てくる。

完全に種の解説なしで、ターベルコースやグレーターマジックなんかに載ってるからそれを見てくれパターン。

演技をする上での注意点や美しく見せるための工夫といった点を語る。

今まさに演じようとしている、すでに演じている。という人からするととてもためになる内容なのだが、うん、中々おらんのではなかろうか

クリアリー・インポッシブル

現象人体切断。

解説は・・・なし(口頭でこれはあれなんだよ。みたいなのはある)。
根本的な原理は古典的な手法と同じ(ダグ・ヘニングを参考にしたとのこと)だが、全くの別物に見える氏の人体切断。
これが生まれるまでに何をどう変えていったのか、というドキュメンタリー的な話

こういう話、わたしは好き。

トリックの違法コピーについても少し触れており、このトリックは結果的にではあるけど、彼らにしか演じることが出来ないトリックになり、コピーしようが無くなったということだが、どんなトリックもそういう風に出来たらいいよねーなんて感じました。

あと印象に残ったのは、デビット・カッパーフィールド氏に言われた「君にはエース・アップ・マイ・スリーブ(袖の中のA)があるだろう」ってセリフかなぁ。

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ゆき

君には双子の兄弟が居るだろう?僕には到底真似できない強みだ。みたいな話

なんでもそうだけど、自分の強みを知り、活かすことは大事っす。

パトリック・マーティンとの対談

ジョナサン氏の学生時代、マジシャンになるまでの間の経歴とかの昔話。

シャーロット氏との出会いについて、ジョナサン氏が初対面のシャーロット氏に熱烈なアプローチを行って口説き落としたことが語られます。

なんだろう、爆発しやがれ末永くお幸せにな!って思いましたが、その後調べたら離婚してました。

わたしのせいじゃない。

最後に

このDVDで紹介されているトリックを演じる準備がすでに整っている、あとは公演に向けて練習だ!っていう状況の人であれば得るものはとても多い内容

でもそんな人はそうそう居ないのではないだろうか・・・。

イリュージョンに興味を持ち、これからはじめたいと思った人が対象かと思ったら、原理や使用する道具の構造に関しての解説がないので絶対に向かない

はじめての人達には、このDVDを買う前に読むべき資料見るべき映像があるはず。

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ゆき

結局何がいいのでしょうね・・・?

ジョニー・スピナさんのDVD『演技をしっかり作り込もう!』がステージで演じる上での演技構成についてなので、あっちでマクロ的な視点を学んだ後に、『マジック・オブ・ザ・ペンドラゴンズ』で個々の演目についてミクロ視点で見直すとかの目的で使うのが良いんじゃないの?とか、イリュージョンの資料を翻訳したものを出した上で、そっからさらに深く学ぶ目的で売り出すとかそういうのがあっても良かったんじゃないのかなーと色々考えてしまう。

というか、このDVDで挙げられていた資料は日本では入手不可な物が多く、イリュージョンをこれからはじめたいという人からすれば、まともに学ぶ手段ないですね。と思わざるを得ませんでした。

悪くはないけどニーズがない。そんな作品だと思いました。

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