所感:GKap’s Live present 「Jorge Blass」

2021-02-07

GKap’s Live present 「Jorge Blass」とは?

スペインを代表するプロマジシャン・Jorge Blass(ホルヘ・ブラス)のGkap’s主催のLIVE LECTURE。DVD版とDLC版がある。

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ゆき

ジョージじゃなくてホルヘって読むのですね

氏はスペインのスターマジシャンであり、イリュージョンや舞台監督もこなす。

Twitterを見たら公式マークあり、フォロワー数も有名人相応で、日本のプロマジシャンと比べるのが申し訳ないレベルの人でした。

DVDのパッケージには2h20mと表示されているが、メインパート1h31m、インタビューパート37mくらいの長さである。

所感:Performance

カード・マニュピレーション

現象空中からAを1枚ずつ4枚取り出し、1枚ずつ消していく。4枚のAが出現・消失を繰り返した後、カードがシルクに変化して終わる。

クリフ・グリーン氏の「フェニックス・エーセス」のようなプロダクションから、いわゆる「5枚のカード」の手順を4Aで行うように変えて繋げた手順。

短くコンパクトな手順だが、個人的には丁度いいかなーという長さ。
この手順にファン・プロダクションを加えたらもう十分じゃないかなと。

エースの出現の際に「クリック・ムーブ」(トパーズ氏から習ったそうな)というマジカル・ジェスチャーについて解説していたのが印象深かった。
ギャレット・トーマス氏のいう「ジョルト」に似ているけど、ジョルトが瞬間的な現象に適した手法だったのに対し、クリック・ムーブは次の瞬間に起きる現象を合図するまさにマジカル・ジェスチャーだなぁと。

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ゆき

普段から使っている人は見かけるけど、あ、それそんな名前だったんですね、と

5枚のカード(4枚だけど)のパートは、使用するカードが4枚に減ってるけど良いところは残しつつスマートになってると思いました。個人的にはこのくらいが良いのだが、物足りないなって人はLukas氏の「TAKE5」(DVD『ARTIST : REMASTERD』収録)あたりに手を出すとかがいいかなーって感じ。

2020年12月のV.INCのマスタークラス(サブスクのオンラインレクチャー)がガイ・ホリングワース氏だったのだけど、その中でちょっとしたマニュピレーションをしていて、まーあんなん見せられたらやりたくなるよねーと思ったり。

20世紀シルクっぽいやつ

現象結んだ白と赤のシルクの間に、黄色のシルクが一瞬で結ばる。

マ―コニック氏の「プリズナー・シルク」という作品らしい。

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ゆき

なにこれ素敵

よく見かける20世紀シルクのような、謎の筒やらグラス等は使わず、見かけ上3枚のシルクだけな上に非常にビジュアルである。

20世紀シルクするならこれが良いでやんす。と思いました。

理論的な話

ステージでマジックをする際に、観客から観たときの劇場の位置(右上・中央下のように6分割)によって、観客が感じやすい感情は異なるので現象の種類によって、領域を効果的に使うのが良いというような話。

演劇ではこういうシーンではこの領域で見せることが多い等、演劇でのセオリーみたいな話ははじめて聞きました。門外漢なのでこういう情報はありがたいです。

クロースアップしかしない人でも、全体の使い方を知ることは重要だよ。というようなことも言ってました。

他にもパーソナリティとマジックのスタイルの話や、TVとリアルのショーでは演目の構成は明確に変えなくてはいけない理由なんかも話してくれており、このあたりはさすがだなぁと納得でした。

パーソナリティとスタイルの話は、マックス・メイビン氏とマイケル・ウェバー氏の対談でも同じ趣旨のことが出ていましたね。

ホルヘ氏はステージ・イリュージョンが専門のプロマジシャンとのことですが、アスカニオ氏やタマリッツ氏の影響を強く受けているとのこと。また度々マックス・メイビン氏の名前も出していて、あー色々繋がっているんだなーと感じました。

演技を良くしていくことの話

古典的な「消える鳥籠」をどう演じたかの実演映像のあと、狙いなんかの話。そこから「フェイスブック・エフェクト?」と呼ばれる「観客のフェイスブックを開いてもらって、その友人リストから選んだ友人が箱から出てくる」という到底実現できないと思われていた不可能イリュージョンを達成するまでのチームメンバーとのブレインストーミングや失敗談など。

古典を学ぶ気の無い若い子と、新しいことをしなくなった年配の方に叩きつけたい内容。

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ゆき

こういうプロが目の前に居たら、わたしは悩まずプロを目指したと思う

他にも、ショーに使う音楽についてや、マックス・メイビン氏から言われたアドバイス、照明の色々な使い方や、インビジブル・スレッドとブラックアートを同時に使うための条件など、実践で培われたノウハウを話してくれます。

3本リング

現象観客を一人ステージに上げて手伝ってもらうリンキングリングの手順。

通常ホルヘ氏が演じるときは、6本リングの中に組み込んでいる手順らしい。

上手いこと観客を利用していると思った。

特にクライマックスの観客を利用してキーを隠して、マジシャンが手に何も持っていない状態を作るサトルティーはいいですね。

ただ、女性客の後ろに回り込んで色々やるのはイケメンじゃないと出来ないと思うのでわたしはやれなーい。

次の「カード・マニュピレーション」にも跨っていく話だが、マックス・メイビンのアドバイス

Don’t Knock the Cloth.(ショーのノイズになるような行動などを戒める言葉)

やShadow theory(観客の認知を妨げる配置に関すること)の話も非常に興味深い。

カード・マニュピレーション

ホルヘ氏のルーティン。

解説されるのは「ジュリアナ・チャン氏の左手からの1枚出し」「簡単なホルダーの作り方について」。

前項から続くShadow theoryなどの話が本体。

より良い演技を。と思う人であればステージ・クロースアップに関わらず良い内容だと思います。

所感:Interview

ホルヘ氏の好きな手品・影響を受けたマジシャン・本といった質問や、コンテストによく出てた頃の話やそこでの友人たちとの出会い、テレビの話なんか。

テレビのマジック番組において引き立て役やサクラを使うことを、「スポーツで言えばドーピング」と評していて、氏のマジックへのスタンスが垣間見えました。

最後に

理論的な話が多いDVDであった。

観てて面白いな―と思ったんですけど、見返すと解説してるトリック自体はかなり少なかったんですね。

クロースアップの人にも通じる内容ではあるものの、メインはステージでマニュピレーションやイリュージョンをしている人向けの内容。

良いものを目指し続ける。という考え方の人にはとっても合うDVDだと思うのだけど、こういう理論系のレクチャーは同じ言語の人が出してるものじゃないととっつきにくく、もったいないなぁと感じます。

それにしてもGkap’sから出てるレクチャーはどれもいいですねー。

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