所感:「ルーティンズ by ガイ・ホリングワース」

Routines by Guy Hollingworth

スクリプト・マヌーヴァ社から出ている日本語字幕付きDVD。日本語版では1999年に発売されたときのオリジナル映像に加え、2014年に撮り下ろされた新規映像も収録されています。

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新規映像はギャンブリング寄りの内容なので、その辺りを購入の判断基準にするのが良いのじゃないかなぁ。

オリジナル・ビデオ(1999)

Travelers

現象デックに戻した4枚のAが、マジシャンのポケット4箇所に移動する。

演技映像ではサインをしていないけど、4枚全てにサインは可能。服装に制限(ジャケットがいりますね)はあるけど衣服に細工するなどの必要は無し。ズボンのポケットも使うので、必然的に立って演じるのが必須になる。

ダイ・バーノンのトラベラーズとは別種の難しさがあるけど、難易度的には無理のないレベル。トラベラーズの中ではかなり好き

A Gambling Routine

現象ギャンブルデモンストレーション。

Aの取り出しから始まり、デックがニューオーダーになって終わる。途中のサトルティなんかも素晴らしく、4枚のAに関するイカサマに絞ることでポーカーを知らない人でも問題ないプレゼンテーションになっている。演技後リセットされるのも便利。

ただ、中間の現象はマジシャンからは「違う」現象なのかもしれないが、観客からすればどれも同じで、ディールを繰り返すだけのギャンブリングデモンストレーションにありがちな退屈さは増してると感じました。

最前列とかでマジシャンの話をちゃんと聞きながら見てる人からは良いトリックなんだけど、少し後ろから見てる人からなんかは退屈に感じるので、演じるときはその辺り注意が必要ですね。

ちなみにわたしはこの手順を自分用にアレンジした手順を演じていますが評判がかなり良く、トリネタに演じてたりします。ドヤァ。

フォールス・リフル・シャッフルの映像解説、どこでやってたかな・・・?ってわからなくなってたんだけどここでやってたよ!

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The Cassandra Quandary

現象ギリシャ神話に登場する悲劇の預言者カサンドラを演出にした予言。予言が当たらないように予言のカードを封筒に入れて取り除いておくが、カードを選ぶと予言のカードであり、封筒の中からカードが消えている。

ある意味オープン・プレディクション。

最初にデックがレギュラーであることを念入りに調べさせることが出来、フェアにカードを選んでもらえるが、ギミックが必要な上にスライト的な負担が割と大きい。特に封筒周りが。

Right Caption

ゆき

スライトとギミックを上手く併用すると、こんな事が出来るという好例かもしれない

ただ、これの改案である「カサンドラ」(新規映像の方にある)の方が、演じやすさ・インパクトともに優れていると思います。演じるなら改案の方が良いなー。

アイディアは好きなんだけど、この手のは結局「デックまるごとスイッチした方がいいな」ってなっちゃうんですよね。

An Ace Assembly

現象4枚のAがひとつのパケットの集まった後、元のパケットに分散する。

アセンブリからのバックファイア。ギミックカードとギミックを使用する。どちらも簡単に入手できるやつ。

ギミックは『ロンドン・コレクション』でも登場していたとある日用品を使うアレ。

見せ方が悪いのか何なのか、正直不思議ではないです。単調な感じもしますし。

バックファイアの部分なんかは他の作品と比べてもかなりフェアだとは思うんだけど、盛り上がりが足りません。トリックの問題というよりは、演者の雰囲気にトリックが合ってないのではないかと。

各パケットからフェアにAが消失するのを見せるためだけに、わざわざこのトリックを演じるより、マクドナルド・エース系やコリンズ・エース系を上手いこと演じる方が個人的には良いかなって思います。

Cards Under A Box

現象3枚の選んだカードが箱の下から現れ、最後は箱の中から出てきます。

ミスディレクション的な操作がないカード・アンダー・ザ・ボックス。

3枚のカードをデック内のバラバラの位置に戻したように見せるコントロールは便利だなぁと。ブラフ系の技法が好きな人は多分刺さるのでは。

3枚目は箱の中から出てくるのだけど、よくある取り出すときにめっちゃ高速になるタイプではなく、フェアにゆっくりと箱の中からカードを取り出せる。どちらの解決策が良いかは好みによると思うけど、もし後者の解決策を知らないのであれば確認してみてはどうざんしょ。

A Card At Any Number

現象サインしたカードが、観客らの言った数字の合計値の枚数目から出てくる。

サインカードを使ったフェアなカード・アット・エニー・ナンバー。カードの選択、数字の選択、枚数の数え方、どれをとってもフェア。

デックはこのトリック用のギミックデックで、前後に他のトリックを演じることは不可。また、カードにサインしてもらうことが必須になるためカジュアルな場で演じるには向かず、サロン・パーラーくらいの場に限られる。

このトリックの核となっている「ユニバーサル・カード・スカム」の原理は、不可能な場所からの出現などに応用できたりと可能性を感じるものだけど、類似の原理がステージ・サロンのメンタルマジックショーくらいにしか使われていない理由と同様の弱点は抱えているので、クロースアップで使うときは気をつけないといけません。

Right Caption

ゆき

この手の策略で起こりうるトラブルに関する考察、なんて情報があったら助かるのになーと思ったり

リフォメーションなんかは、ユニバーサル・カード・スカムの弱点を上手くカバーしながら最大限活かせてる気がします。

このトリックは、手軽にサロン・パーラーでカード・アット・エニー・ナンバーを演じたい人には良いかも知れませんね。

The Reformation

現象4つに破いたカードを、一片ずつ繋げていく。

実演のみ。

トーン・アンド・レストア・カードの中の、一片ずつ繋げていくタイプの元祖手順。にも関わらず、現在生き残っているもののひとつでもある。

個人的にはやっぱり、3/4の時点をあれだけフェアに見せれるのは他にはないよなぁと。解説は同名のDVDでどぞ。

まぁ、わたしが人前で演じるときはダニエル・ガルシアの『TORN』なんですけどね。

コメンタリー(2014)

A Gambling Routine

1999年映像に収録されていた手順が、Aを集める場所がディーラーから4番目の観客の位置に変化。それに伴う操作の変更を解説。ただ日本語字幕に間違えがあって、4枚で行っていた操作をすべて3枚にするとなってるけど、変えるのは最初だけ。字幕は「3枚」となっててもフォーって言ってる部分があるのだ。

False Shuffle

テーブルフォールス・シャッフルの解説。

チャーリー・ミラーのストリップアウト・シャッフルを、ガイが少し間違えて覚えていたことで生まれたアイディア。カードを噛み合わせた後、中指でデックをの端を揃える動作が入っている

また、抜き取る動作をミスなく行う方法や、その方法の不自然な点をさらに改善したアイディアも収録されているので好きな人は参考にどうぞ。最終的な改善したアイディアは他のストリップアウト・シャッフルにも応用できる動きです。

Zarrow Shuffle

ザロー・シャッフルのガイver。
デレック・デルガウディオのWorraz Shuffleの逆方向みたいな。

Bottom Deal

ボトムディールのガイver。

わたしがやってたボトムディールと同じ方法でした。比較的簡単な部類だとは思います。ストライクだよ。
ボトムディールにおいて、プッシュアウト法を諦めた理由を話していますが、指が長いとこういうデメリットが生まれるんだなぁと。

Putting Cards in Order

手順の最後などで、カードが揃っているはずなのに失敗してバラバラだったときになんとかする方法の解説。

カードの順番を一旦覚えて、上から配ると見せかけてAから順番に配るよっていう演出。

マークもごちゃごちゃになってるときには微妙だけど、覚えておくと役に立つことはありそうです。そんなことが起きないようにしたいものですが。

そういえばレナート・グリーンのアングル・セパレーションについての話が出てくるけど、解説はされていない。気になる人はグリーン・マジックで確認を。

Alternate Handling

ギャンブリング・ルーティンを準備なしの即席で行うハンドリング。

観客に参加人数を決めてもらい、それぞれに手を配り、それぞれのプレーヤーがカード捨てて引くを繰り返した後、ディーラーが1枚カードを交換するとロイヤル・フラッシュ。という手順。

スタックの仕方は手軽で面白く、途中の自由度が高いのは良い。セカンドディールの回数が多いので練習に良いかもしれない。

ただあまりギャンブリングをしない人だと、わざわざ覚えるほどでも。という感じになりそう。「The Secret To A Perfect Royal Flush」を全力でボトムディールする方がいいな。

False Deal Method

ギミックを使ってフォールス・ディールを簡単に行うアイディア。とはいってもセカンドディールは出来る必要あり。トップに目的のカードを複数枚残したままディール出来る。サードディール、フォースディールなんかをセカンドと同じ難易度で行えるみたいな。目的のカードがデック内のどこにあるのかすぐわかるのも地味に便利。

ギミックはちょいちょい出てくるあれだ。

有効な使い途が紹介されているわけではないけど、こういうのが好きな人は知っておくと良いかもね。

Montgomery

現象スペードのAと3枚の適当なカードで行うモンテ。嘘の種明かしをしながら毎回引っかける3段構成。

カジュアルな感じに演じる手順。でもちょっと準備は必要。演技後は4Aが場に残るので、それをメインに使うトリックに繋げるとかが良さげ。

セカンドディールを何度も使うことになるけど、構成と「嘘の種明かし」という演出によって、上手いこと見られたくない動作がカバーされているので練習用にも良さそうである。

このトリック結構好き

Cassandra

現象予言のカードを破いて一片だけを置いておき、デックから1枚のカードを観客に選んでもらうと一部分だけ破れており、最初に置いておいた破片と一致している。

「The Cassandra Quandary」の改案。とてもスマートな改案になっていると思います。

複雑な操作はなくなり、難易度も大分下がっています。検め性なんかは原案よりも下がっているけど、正直過剰気味だったのでこちらで出来るレベルの検めの方が良いなと。クライマックスの衝撃はこちらの改案の方が間違いなく強いです。

ギミックを作るのが多少面倒だけど、一度作ってしまえば劣化するまでは長く使える。ギミックを作るよりも「ギミックを作るためのギミック」を作る方が大変な気がしますが、わたしは元々同じ用途の物を持っているのでそっちを使いますが。ゲータン・ブルームばんざーい。

このギミックデックを使って前後にカードマジックを演じるのは不可能。パケットトリックくらいならなんとかなるけど。

似た雰囲気のあるトリックであるジョシュア・ジェイの「hitchcock」を多人数サロン向け、この「Cassandra」を少人数クロースアップ向けで演じ分ける。なんて使い方したいですね。

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DVD

Posted by ゆき