松田道弘さんのカードマジックベスト50について語ってみる(*゚ー゚)4週目

松田道弘さんが面白いと思った・歴史に影響を与えたと判断したトリックを紹介した「松田道弘さんのカードマジックベスト50」を、30年経った今、見返しながら色々語るコーナーの続きの続きの続き。

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松田道弘さんのカードマジックベスト50について語ってみる(*゚ー゚)

31 The Forehead and the Salt Shaker

Michael Closeの作品。

観客のカードが、いつの間にか演者のおでこにくっついていたり、塩瓶の下に移動していたりするルーティン。

バーマジシャンの鉄板トリック。
語ることはない。きっと人前でよく演じるマジシャンなら独自のルーティンを持っているだろう、そういうトリックだ。

ないなら色々参考になると思うよ。

実演だけなら氏のDVD『シグネチャー・エフェクト』(日本語字幕版あり)で見れるのでそちらで。解説が欲しいって人は氏の作品集『Wokers #3』で。

Workers Number 3 by Michael Close(Vanishing inc.)
所感:「シグネチャー・エフェクト by マイケル・クロース」

32 Poor Charlie

Derek Dingleのストーリー付きパケット・トリック。

ギャンブラーのチャーリーが、バラバラの手札へ隠していたカードをこっそり足してイカサマするが、イカサマに使うカードの裏の色がどれも別だったので、足す度に裏の色をすべて変えていってなんとかする、というストーリーに合わせてカードのカラーチェンジをしていく現象。

Alex Elmsleyの「Dazzle」、を元にしたBruce Cervonの「Dirty Deal」、を元にして生まれた作品とのこと。

特殊なバックのカードを複数使うので、基本売りネタとして販売してるようだけど、Dirty Dealは『カードマジック事典』にやり方のみ掲載、Poor Charlieは『デレック・ディングル カードマジック』(東京堂出版)にギミックカード付きで「可哀想なチャーリー」という邦題で載っています。

個人的にはカードの扱いが窮屈なので、原々案のDazzleの方が好みかなー。

そういえばDazzleは2024年あたりに、Adrian Vegaが「Crazy Dazzle」って名前でリバイバルしてましたね。

Crazy Dazzle by Adrian Vega, Crazy Jokers and Alberto Ruano(Vanishing inc.)

33 Finally Unassembled

Allan Ackermanのトリック。

いわゆるバックファイアのエース・アセンブリ。この本が発売した頃(1996年)からしばらくは、一旦集まった後に逆戻りする現象の名称が、「リバース」や「バックファイア」や「キックバック」(個人的にこれは意味が違うので異議を申し立てるが)など色々と統一されていなかったですね。現在でもそうかもしれませんけど。

ちなみに同じタイトルで、レギュラー版とギミック版が発表されていて、ギミック版はこのプロットをストレートに達成するものでこれ以上はないだろうと思える出来で、この松田道弘が選ぶベストカードトリックが掲載されている『松田道弘のマニアック・カ-ドマジック』にもバリエーションが載っています。

だからといってレギュラー版がギミック版に劣るとかと言われればそうでもなくて、数あるバックファイア系でわたしが結局演じているのもこのレギュラー版(を変えたものだけど)だったりします。

レギュラーで出来るバックファイア系だと、ゆうきとも(この記事で敬称は略する事にしてるので付けてないだけだ)の「ピュア・エーセス」、J.C.Wagnerの「Dislexic Queens」くらいしか印象に残ってないなぁ、結構色々な人が出していた気がするんだけども。

Allan Ackermanは今でもyoutubeにコンスタントに動画を投稿していて、このFinally Unassembled(の現在のハンドリング)も投稿されていたので興味があればチャンネル登録してあげてね。

Las Vegas Kardma by Allan Ackerman(Lybrary.com)
Commercial Magic JC Wagner by JC Wagner(Vanishing inc.)

34 Cards in a Sealed Envelope

Paul Le Paulの名作トリック。

サインをしてデックに戻したカードが、しっかりと閉じられた封筒の中から出てくるトリック。

名作過ぎてルポール・ワレットが未だに定番用具になってたりするので語ることも特にないほど。

ルポール・ワレットって、確かPaul Le Paulの発明じゃなくて、誰かがCards in a Sealed Envelopeをワレットで出来るように作っただけで、Paul Le Paulはルポール・ワレットを使っていなかったって聞いた気がします。

The Card Magic of LePaul by Paul LePaul(Lybrary.com)

35 Future Gambler

Larry Jenningsのトリック。

ポーカー・デモンストレーションとトライアンフの混成トリック。過去のギャンブラーはオーバーハンド・シャッフルでハンドを積み込み、現在のギャンブラーはリフル・シャッフルで積み込み、未来のギャンブラーは裏と表を混ぜて積み込む・・・、というような演出で見せる3段構成。

Jenningsが来日した際に見せられ、最も印象に残ったトリックだそうな

一般的なポーカー・デモンストレーションは退屈だけど、このトリックは狙いがはっきりしていて、構成の巧さに感動した。と評価していたそうです。

実演を見ていないのであれですが、わたしはあまり興味を惹かれませんでした。トリック内で使われてるサトルティに感心する部分はありましたが、別のトリックで上手く活かしてる例が他にもあるのでなんとも。

そのまんま覚えるのはきつい手順だと思いますが、クライマックスに直結する部分は割といじることが出来る余地が大きいので、自分に合わせて調整するべきトリックではないかなという感想です。

36 Koran’s Miracle Blindfold Card Act

イギリスのメンタリストAl Koranのトリック。七段からなる長尺のアクト。

演者は目隠をした状態で、観客のカードを色々な見せ方で当てるっていう現象。

シンプルな原理ながらも、ウケるだろうなぁ~って感じる手順。フルでやるのはアマチュアなんかだと用意が重い気がするけど、カード当てってのはこういうのでいいんだよ、こういうので。って思います。

カード当て系のトリックで、「このまま当てるのはつまらないので」ってセリフを言ってる人に遭遇すると、それはお前の目が節穴になってるだけじゃい、っていつも思うんですけど、そういうのないですか?そうか、ないか。みんな優しいな(*゚ー゚)

ちなみにですが、わたしは視力激弱の民なので目隠しをしないのですが(初期に知ったのが、実は見えてる系のネタが多く、裸眼だと何も見えないので諦めた、の意)、そういうのが気になる人には、これは視力依存しないですよって伝えておきます。

37 Pro-monition

Eddie Josephの名作「Premonition」の、Ted Lesleyによるヴァリエーション。

Premonitionは、観客に1枚のカードを口頭で答えてもらってデックを渡し、そのカードを抜き出してもらうが見当たらず、52枚あるはずのデックが51枚しかない。観客の言ったカードは予めマジシャンが抜き出していて、ポケットから取り出す。というような現象。

基本的な原理などは原案と同じ。
Ted Lesleyは用具の準備の仕方や、演じる際のセリフ回しや立ち回り、考えなければいけないことを演出に合わせて分割して安全に正確に行えるようにしていたりと、実際に演じるうえでのTIPSをかなり詳細に考えていたのが印象的でした。レパートリーに入れてる人が居れば要チェックだと思います。

Paramiracles by Ted Lesley(Penguin Magic)

38 The Helicopter Card

Tony Slydiniの名人芸。

デックを半分に分け、一方をテーブルの上に乱雑にバラマキ、観客のカードは演者が手に持ったパケットの中に入れるが、いつの間にかテーブルの上のばら撒かれたカードの中に移動している。

一言でいえば繰り返すカード・アクロスって感じでしょうか。
動きのすべてが綺麗なんですよね、名人芸ってこうあるべきって感じです。

あまり取り上げている日本語書籍は見かけませんが、『カードマジック THE WAY OF THINKING』(松田道弘 著)の中で氏が色々語っていたので興味のある人はどぞ。

youtubeに本人映像が残っているので貼っておきますね。

The Magic of Slydini by Lewis Ganson & Tony Slydini(Lybrary.com)

39 J.C.’s Fabulous Four Ace Routine

JC Wagner版、Henry Christ’s Fabulous Ace Routine。

4枚のAをデックの中にバラバラに戻し、色々な方法で取り出していくという現象。

Dai Vernonの「Cutting the Aces」にインスピレーションを受けて生まれた、Henry ChristのFabulous Ace Routineのさらにヴァリエーション。

Cutting the Acesは同じ操作でAを取り出していましたが、Fabulous Ace Routineはひっくり返って出てきたり、出てきたカードの数字分配ると出てきたり、スペル綴ると出てきたり、観客の言った枚数目から出てきたりと、見せ方を色々工夫できるため、Cutting the Acesよりもヴァリエーションが多い印象です。

日本語圏では「スペルを綴る」というところが受け入れられず、あまり演じている人が居ないようです。自分で変えて演じる、というのは意外とハードルが高いようです。

わたしはAndi GladwinがDVD『Master Pushoff』の中で演じていたものが印象に残っています。スペル綴るんですけど、これだったらそのままでもいい!と思いました。

あ、ちなみですけど、JC Wagnerのハンドリングは未見です。ふへへ。でもレビューなどを聞く限り、とても良いようです。

Commercial Magic of JC Wagner(Vanishing inc.)
More Commercial Magic – Volume 2 by JC Wagner(Vanishing inc.)
Cutting the Acesについて書いてる記事:松田道弘さんのカードマジックベスト50について語ってみる(*゚ー゚)

40 Point of Departure

Alex Elmsleyのトリック。

2枚のAの間に観客のカードが挟むが消えて、ポケットから出てくる。

個人的にはPoint of Departureよりも、このトリックをカジュアルに演じれるようにしたEconomy Class Departureの方が馴染み深い。よく演じるし、パームオフやオフバランス・トランスポジション系のトリックで同じ策略を使っているのをよく見かけるので。

でもPoint of Departureはちょっと面倒な分説得力やフェアさが段違いですね。

収録されている作品集などが意外と少なく、原案を読んだ覚えないのになんで知ってるんだっけ・・・?となったけど、『松田道弘のカードマジック』にPoint of Departureの改案が載ってて、そこで原案も一緒に解説されていたからだった。

原著高いみたいだしなぁ。羊頭書房に限定版の在庫があったんだけど、78000円ですってよ!

The Collected Works of Alex Elmsley (2 volumes Set) | SF・推理・手品・趣味・洋書 古書 羊頭書房
Stephen Minch L&L

Alex Elmsley Tahoe Sessions 1 – 4 By Alex Elmsley(Economy Class Departureが1巻に収録)(Vanishing inc.)

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