所感:「Industar – 新井ショウ」

2020-06-20

Industar – 新井ショウとは?

手品イベント「マジックマーケット2019」において、プロマジシャン・新井ショウ氏が頒布したレクチャーノート。
カードマジック2つ(カラーチェンジ1種+トリック1種)、コインマジック2種の計4つを収録。

タイトルは氏が最近ハマっているカメラに関連した用語で、ロシア製レンズのシリーズのことだとか。

所感

  • 難易度はお察し
  • カードトリック1種以外は実演動画あり

Vertical Bertram Change(縦バートラムチェンジ)

体の真正面で行うバートラム(のような)チェンジ。

デックを手に持った状態且つ、カードを真正面に示した状態でバートラムチェンジを行う。
通常のバートラムチェンジでは手の中を通過するとチェンジされるが、縦バートラムチェンジではパケットを通過させる。

変化させる前段階において少しカーディストリー的な動きが入るが、原理を理解すればその辺りは好みでカットなりアレンジなり出来る。

パケットを持ったまま行うため、通常のバートラムチェンジよりも難易度は少し高めかもしれないが、氏の作品にしては実現可能なレベルである。

写真多めで解説されているので、理解はそれほど困難ではないでしょう。

*ノート購入者用に動画が公開されています。

Out of Sight +(アウトオブサイトプラス)

観客の言った数字に従ってカードを配っていくとエースが出現する。
最終的に配る過程で出来た山をめくっていくとすべてのエースが現れる。

まさかのセルフワーキング。
古典的な原理を用いたシンプルなエースオープナー。
すでに発表されていてもおかしくないアイディアなので、同じ作品があったら教えて欲しいそうですよ。

読んだ限りでは100%セルフワーキングだが、解説のところに「ほぼセルフワーキング」と書いてあるので、おそらく氏は普通の演じ方をしていないと思われる。

*このトリックのみ実演動画なし。

Coins to pocket

4枚のコインが1枚ずつポケットに飛行します。

いつもの新井ショウ氏です。
実演動画が一般公開されているトリック。

動画でも分かりやすい部分として、2枚目・3枚目の飛行ではポケットの中からコインがぶつかる音が聞こえ、4枚目の飛行は一切手を使わずに飛行の瞬間を見せるというアイディアが使われていて面白い。

ポケット内で音を出すという発想の先行手順である、Eric Jones(エリック・ジョーンズ)の『Audio』に収録されていた手法と比較すると、音が小さくて聞こえにくいという弱点は残っているものの、より小さい動作で行えるようになっている。

また動画では分かりにくいが、秘密裏にコインの受け渡しを行う際にユニークな方法を行っています。
実演を見る前にノートを少し見たのですが、最初意味が分かりませんでした。
原理的には確かに昔からありはしましたが、よく手順のど真ん中に組み込むような使い方を思いついたなと。

いや、多分思いついても普通はやらないだけな気もする。

4枚目の飛行もこのアイディアの延長と言えるので、効果の程は感じていただけるかと。
(失敗しそうなときの代替案がひっそりと記載されているので、勇気のない人はそちらを)

服装の条件が結構シビアなので注意。

3coins across

3枚のコインが1枚ずつ、左手から右手へ移動する。

テーブルを使わずに行えるが、角度に厳しく無駄に難易度が高いため、マジシャンにしか見せない手順だそうです。

「Coins to pocket」でもそうだったのですが、ロールダウン・フラリッシュを多用しています。
フラリッシュとして見せているだけではなく、ロールダウンに見せかけたシークレットムーブを色々と行っているため、ロールダウンが出来ないとそれ以外の動作も考え直さないといけなかったりします。

逆に言えばロールダウンから派生出来るシークレットムーブを探している人とっては、色々参考になるものが多いのではないだろうか。

実用的か?といえば完全にNOだが、ロールダウンを使いこなしたい!という少数派の頭おかしい人達には非常に参考になる作品。

*ノート購入者用の動画が公開されてます。

最後に

セルフワーキングを目にしたときには少し目を疑いましたが、いつもの新井ショウ氏でした。

普通のマジックショップに並んでいたら、買った人からクレームが来そうな、マジケ頒布品だからこそ許される、そんな作品集。

載ってる作品が出来るようになったら、仲間のコイン馬鹿に自慢とか出来るのでそういうのが好きな人におすすめ。


普通の人にはおすすめしないよ!

製品情報所感一覧表示へ戻る