所感:「NOTHING BUT THE FAMILY DECK by Jared Kopf」

2020-11-22

NOTHING BUT THE FAMILY DECK by Jared Kopfとは?

北アメリカを中心に活動しているマジシャンJared Kopf(ジャレット・コッフ)氏が2015年来日し、新箱根クロースアップ祭にゲスト出演した際に作られた20pほどのレクチャーノート

氏はMAGIC誌にレビューのコラムを書いており、数冊の本やノートも出していたりする。

未見ではあるのだが、PENGUIN LIVE LECTUREにも出ており、PENGUIN LIVEのおすすめ回を聞いたときに大体名前が挙がるマジシャンなので、興味のある人は観てみて欲しい。

2020/11/20追記

氏のDLCにこのノートのトリックが収録されています。
購入を考えている人は、そちらで実演を観たら良いと思いますよ。

所感

Repelling Breathers

カードをかなり曲げるリフル・シャッフルを繰り返したとしても、ブリーザー・クリンプの機能を長時間維持出来るちょっとしたコツ的な話。

あくまでこのコツに関する話だけで、手順なんかの話はない

ブリーザー・クリンプを多用する人は知っておくといいと思う。

ブリーザー・クリンプを有効活用した手順だと、ピット・ハートリング氏の書籍『カードフィクション』(日本語版あり)に載っている手順や、ジェイソン・イングランド氏のノート『ジェイソン・イングランドと仲間達』(日本語版あり)にいくつか載っていたので参考にでも。

リフル・シャッフルタイプのフォールス・シャッフルが載っている資料をまとめた記事を昔書いていたので、それも参考なれば。ブリーザーを気にせずリフル・シャッフル出来るぞい。

The Optical Run and Toss False Shuffle

オーバーハンド・シャッフルタイプのフォールス・シャッフル。

オプティカル・シャッフルに+αの動きを入れたものになっており、最終的には一度カットされた状態でシャッフルを終える(この後1回カットを入れて元に戻す)。

こういったフォールス・シャッフルは好みによるのではないかと思います。
解説の際に「オプティカル・シャッフルの動きをここで行います」とか入ってくるので、オプティカル・シャッフルを知らない人は注意

類似のシャッフルだと・・・うーん、デレック・デルガウディオ氏の「Underhand Shuffle」(ノート『Derek Delgaudio Japan2012』)とかと思ったけど、これはどっちかっていうと「逆オプティカル・シャッフル」か。

でもまぁ、面白いと思ったのでちょっと名前挙げたままにしておきますね

A Riffle Shuffle Set-Up for Dai Vernon’s”Out of Sight,Out of Mind”

ダイ・バーノン氏の傑作「アウト・オブ・サイト アウト・オブ・マインド」をリフル・シャッフルでセットする・・・というもの。

この項は「あのポジションにするまで」の動作の解説であり、原案を知らなければ意味がないので注意である。

リフル・シャッフルでのセットアップというタイトルになってはいるけど、特徴を挙げるのであれば

・原案のようにオーバーハンド・シャッフルを使うのではなく、テーブル・カット、テーブル・リフル・シャッフルの動きでセット

・「あのポジション」まで配置出来たら、ブレイク等を維持しなくても良い

という点だと思う。

この辺りのディテールにこだわりたいや、ブリーザーを日頃から使っているのであれば参考にしたら良いと思う。

わたしはMax Maven氏の手順が好きなので使わなそうなアイディアかと思っている。

Max Maven氏のやつはこれに収録されています。

Shuffle Shift

テーブルで行うマルチプルシフト。

テーブル上にスプレッドしたデックにバラバラに差し込んだ複数枚のカードをまとめてコントロールする技法。

マーチン・ナッシュ氏のマルチプルシフトのアレンジだそうな。
この手の技法を見ると、ジャン・ピエール・バラリノ氏が思い浮かぶ。

有用だが「ここまで来たらあとは~して~すれば」といった風に、最後まで解説してくれるわけではないので、ある程度知ってる人じゃないと理解は辛いかもしれない。

Far-Flung Collectors

現象 コレクターズ現象。

観客の選んだ3枚のカードがデックから消え、観客の手に置かれた4枚のエースの間に挟まった状態で現れる。

やばかった、と生で観た人達(2015年の箱根)の感想をよく聞く。
カナダやアメリカのマジシャンからも「今まで観た中でベストなコレクターズは、ジャレット・コッフのかな」という声も聞こえるので、一度観てみたい手順だったりする。

活字で読んだ感想だけでいうと、中々に演るの怖い上に難しい。ってのが第一印象。

ベンジャミン・アール氏の「コレクターズⅠ」と「コレクターズⅡ」をもっとエグい感じにしたらこんなんなると思う。

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ゆき
観客の手の上で何しとるねん

挑戦したい人はどうぞ。これが自然に出来るようになったら、それはもう尋常じゃなく上手くなってると思う。

2020/11/22追記

実演見れました。

An Open Display of Triumph

見た目シンプルなトライアンフ。

わたしがトライアンフを演じるときは、この「An Open Display of Triumph」か佐藤総氏の「ブッシュファイア・トライアンフ」のどちらかだったりする。

見た目は本当にザ・トライアンフって感じなのだが、わたしが思うこのトライアンフ特徴は

裏と表であることを示した後、混ぜ合わせてから揃えるまでをゆっくりとフェアに見せることが出来る。

この点だと思っている。

ザローやブッシュスルー等あの辺のシャッフルは使わないので、一番ギルティな部分をゆっくり行えるのが良いなぁと思う。

Right Caption
ゆき
タイトルもそういう意味合いで付けたんだろうねー

良手順だと思います。

E.G. Brown Revisited

現象 12枚のカードを使ったカード・アクロス。

12枚のカードを6枚ずつのパケットに分け、一方の中から覚えてもらったカードが消えて、もう一方のパケットに移動している。

ジャレット氏の師であるBob White(ボブ・ホワイト)氏の「Thought-Of Card Across」(E.G.ブラウンの手順の改案。ボブ氏のDVD『Card Magic Practical Approach』に収録されている「E.G.Brown’s Thought of Card Across」と同じものだと思われる)を観せてもらった後、それを出発点にして作り上げた手順。

元ネタとの比較が出来ればよかったのでしょうが、元ネタは未見。

即席で演じることが出来、目立ったデメリットもないので覚えておいて損はない手順だと思います。

最後に

興味深いことが書かれていはいるが、既存の手順を知っていることが前提だったり、異常に難易度が高い手順だったり、ディテールにこだわり過ぎているTIPSだったりと、Jared Kopfというマジシャンを知らない人が触れるには相応しくない資料かもしれない。

Right Caption
ゆき
レクチャーノートって存在自体がそういう物っていう面もあるけど

2015年来日時に生で氏の演技を観た人や、他の映像媒体で本人が動いてる映像を観て興味を持った人がさらに色々知るために読むような資料だと思いました。

悪い資料ではないが、読む側にそれなりに高いハードルを要求してくるタイプなのでその点は注意が必要ではないかなと思いました。

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