所感:「The Monster of the Secret Art」by もっさん ①

2021-10-26

「The Monster of the Secret Art」by もっさん とは?

ありがたいことに恵贈いただきました。

日本を代表するコインマンである「もっさん」の、2012年に発売されたDVD作品集『Monster』以来、9年ぶりになる作品集(書籍)。15年の集大成

A5サイズ300ページ超えのハードカバー本。残念ながら凶器にするには少し重量が足りない

収録作品の殆どはコインマジック関係の作品や技法。カードマジックは2作品だけ収録されている。

収録作品のうち9つは、書籍内に記載されたURLへ飛ぶことで動画視聴可能になっている(場合によって今後追加される可能性ありとのこと)。

購入ページへのリンク
発売前に書いた「記事:もっさんの新作プレオーダー開始しましたね」へのリンク

所感

もっさんは「左利き」です

ぶっちゃけあんまり売れて欲しくないなこれは。っていうのが本音。

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ゆき

紛うことなき名作だらけですわ

欠点を挙げるとすれば「初心者向けの参考書にはならない」とか、そのくらいの揚げ足取りレベルの意見しか思い付かない。

作品の狙い・経緯・タイミング・コツなど、これまでの発表された映像作品だけでは伝えきれなかった内容まで網羅されており、こういった部分を深堀り出来るのは書籍媒体ならではだなーと思います。

先行作品や類似の作品についての情報についても充実してますし、研究者気質の人も満足出来るでしょう。

難易度については、決して簡単ではないが不可能なほどに難しいというものは無く(た、たぶん)、いや・・・難しいかな・・・?これまでの『Monster』や『MAJION LIVE LECTURE』と同程度くらいと思ってもらえれば。

また、もっさん作品のPV映像を見ると「動画だからすごく見えるんじゃないか?」と思っている人もいそうだが、氏の作品は「これは人前では出来ないな」となることが皆無である。

対人向きの手品、動画向きの手品、わたしはどちらも一長一短があると思っているのだが、もっさんの作品に触れると「どっちでも最大のパフォーマンスを発揮できる手順を考えればいいじゃない」と言われながら殴られているような気さえします。

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ゆき

こいつ強いぞ、気をつけろ

というわけでこれは名作です。買えるうちに買っておくことをおすすめします。

本書だけでも十分理解できると思いますが、どうしても映像が・・・という人はMAJION LIVE LECTUREのもっさん回が非常に素晴らしいのでそちらをチェックすると色々と捗ると思います。

MAJION LIVE LECTURE「もっさん」回の購入ページへのリンク
レビューしたときの記事『所感:「MAJION LIVE Lecture -もっさん.-」』へのリンク

以下、個別に感想などを。

長くなるので、今回は最初のセクション「Assembly/Matrix」だけ書きます
続きはまたそのうちで

Assembly/Matrix

KATSUKARE Steal

現象コインの技法解説。

これまでの作品集などでも度々登場していたが、名称が付いてなかったり、「カツカレー・スチール」とカタカナ表記だけだったりしたが、どうもスペルは「KATSUKARE Steal」だったようです。

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ゆき

KATSU(もしくはcutlet) CURRYだと思ってました

コインマトリックスで猛威を振るう技法で、本書における基本技法。

氏が「この技法をコインマトリックスのスタンダードにしたい」と言っているのを聞いたことがあるが、普通にそのポテンシャルはあると思う。

非常にわかりやすく解説されているが、映像での解説がどうしても見たい。という場合にはMAJION LIVE LECTUREに氏が出演したときの回を観ればいいでしょう。

Easy Quick Four

現象カード2枚を使ったコイン・アセンブリでフラッシュ・マトリックス。

MAJION LIVE LECTUREでは「シンプルアセンブリー」の名前で解説されていた手順。

カードの代わりにお札を使うことが出来たり、4枚のコインがすべてバラバラのものであっても演じることが出来、リクエストされたときにサラッと演じれる手順として重宝していたそうな。

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ゆき

テンポがいいっす

スチールの習作にも。

Flash Matrix

現象4枚のカードと4枚のコインを使ったフラッシュ・マトリックス。

DVD『MONSTER』が初出のもっさん氏のシグネチャー・エフェクトともいえる手順。

実演のフル映像があるので、観たことある人多いと思う。
書籍内URLからいけるリンク内にも実演映像あり

演じる際に陥りがちな角度の問題等について、非常に細かなアドバイスがされており、DVDで観たけど「これ大丈夫なのかな・・・」と思った人は参考になると思います。

この辺りの話は、MAJION LIVE LECTUREでもされていましたね。

難易度は高めなので、習得の最終目標とかでいいレベルかな。

Another Flash Matrix

現象4枚のカードと4枚のコインを使ったフラッシュ・マトリックス。

ちょっとギミックを使用。

前項の「Flash Matrix」に続けて演じるための手順。
こちらも書籍内URLからいけるリンク内にも実演映像あり

今度はゆっくりやろうか?という定番のギャグをやりつつ、公明正大に観客がガン見している中、さっきとは別の場所に集合するのがいやらしいです。

Flash Back

現象いわゆるバックファイア・マトリックス。

前項の「Flash Matrix Another」から続く手順。
実演映像あり

演出でバックファイアすることにポジティブな理由を与えており、この演出であればルーティンの最後にこのトリックを持ってきたとしても納得できます。

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ゆき

バックファイアという言葉通り、失敗したという演出でクライマックスを向かえるの見かけると「失敗したまま終わんのかい!」ってつい突っ込んでしまうけど、これなら納得する。の意

Another Flash Matrix (No Gaffs)

現象4枚のコインとカードを使ったフラッシュ・マトリックス。

タイトルの通りレギュラーでやる手順。

これスパルタコイン塾轟で習ったやつだ(`・ω・´)!わたしこれ、出来ますよ( ・´ー・`)どや

カツカレー・スチールの習作にも良いと思います。

Reverse Matrix

現象いわゆるリバースマトリックス。使うカードは4枚。

本来はなくていい動きがマジシャンを襲います。

MAJION LIVE LECTUREにも「バックファイア」というタイトルで収録、DVD『MONSTER』にも収録されてました。

気づいてしまったんですけど、MAJION LIVE LECTUREで「Reverse Matrix」と「Back Fire Assembly」、名称逆になってますね(`・ω・´)

ここで解説されているダブルピックアップは、初めて知って実際にやってみたとき、全く出来る気がしなかった覚えがあります。

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ゆき

今は出来るようになりました

Back Fire Assembly

現象クライマックスのビジュアルさに全振りしたリバースマトリックス。使うカードは2枚。

MAJION LIVE LECTUREでは「リバース・マトリックス」というタイトルで収録、DVD『Monster』では「Back Fire Assembly」の名前で収録してある。

「コインがリバースする理由」という見出しで、この手順の演出、ルーティンに組み込む際の構成例についての氏の考え方も話している。ここも参考になるのでどんぞ。

The TIME on Matrix

現象コインとカードをひし形に配置して行うフラッシュ・マトリックス。に加えて腕時計が現れる。

もっさんがFISMで演じた3段のコインマトリックス手順の3段目
書籍内URLからいけるリンク内にも実演映像あり

ちなみに2段目に演じていた手順は「ダイヤモンド・マトリックス」というタイトルでMAJION LIVE LECTUREで解説されていた(本書にはこちらは収録されていない)。

ひし形に配置する理由や、腕時計という一見コイン・マトリックスに関係ないものをどのように演出として手順に紐付けているか?といった部分も参考になると思うよ。

ちょっと準備が必要(腕時計にちょっと細工をしたり)な部分があったりしてとっつきにくい部分はあるが、ルーティンの最終段を飾れるほどのインパクトを持った手順だし、他の手品でも使える(本書にも収録・DVDとDLCでも発売されてる「ウォッチ・ザ・ウォッチ」という手順は、元々レギュラーの腕時計で行うルーティンだけど、これを使うことでかなりラクになる)ので興味があれば手を出してみてはいかがだろうか。

International Chink a Chink

現象4種4枚のコインを使ったチンカ・チンク。終盤はバックファイア→フラッシュになる。

DVD『MONSTER』にも収録されていた手順。

この手の手順には明るくないので下手な事言えないが、類似のプロットの中では演じやすい実用的な手順なのではないかと思います。

ただ、本書に収録されているマトリックス系トリックの中では一番演じにくい作品かもしれない

同じコンセプトの作品だと、TAKAHIRO氏の「WORLD’S END CHINK-A-CHINK」(DVD『World’s End』収録)を思い出します。こちらはちょっと前準備が面倒だったりしますが、興味のある人は調べてみたら良いんじゃないかな―。

Only Four

現象ノーエキストラのチンカ・チンク。

単独でDVD・DLCとして販売もしているトリック。
動画で覚えたい人はそちらをチェックすべし。

DLC販売ページへのリンク

縛りの都合上、難易度は高めであることは否めないが、習得さえしてしまえば囲まれたような状況、テーブルの質が良くないといった場所でも演技できるのでかなり強い武器になります。

クレジット項目を見ると先例が確認できますが、そういえばここ数年めぼしい手順を見ていない気がしますねぇ・・・。

The Sympathetic Matrix

現象四隅にコインを置き、ハンカチでひらひらするたびにコインが移動する。

SNSでも話題になっていたビジュアルなコイン・アセンブリ。
実演映像あり

解説を読むまで裏側が全く想像できなかった

きっと、難しかったり面倒な下準備が必要だったりするんだろうなと勘ぐったが、ここまで登場したマトリックス系の作品を習得できていれば問題なく演じれるレベルだし、特殊な道具も必要ない。

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ゆき

Assembly/Matrixのセクションを締めくくるのに相応しい作品でした

続きはまたそのうちで(二度目

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