所感:「パーティ・アニマル 2 by マシュー・J・ドーデン」
Party Animal by Matthew J. Dowden
マシュー・J・ドーデンのカードマジック作品集のDVD。
元は2枚組のDVDだったけど、日本語版は1巻と2巻に分かれています。
コンセプトは1巻と同じで、テーブル・ホッピングやスタンディングで演じやすい作品が多い。バーで演じるのにも便利ですね。
わたしは「Card to Mouth」が気に入りました。
パーティ・アニマル・シリーズは、テーブル・ホッピング、バー、ストリートで演じることが多い人にお薦めできるシリーズでした。
1巻のレビュー記事:「パーティ・アニマル 1 by マシュー・J・ドーデン」
所感
Card to Any Number
カード・アット・ナンバーのギルティな操作を、アンダー・ザ・ボックスの現象を挟んでミスディレクションにしてカバーした作品。マジシャンを看破出来るようなトリックではないけど、2枚のカードを同時に当てるときには重宝しそうな手順です。
なんかこう、ギルティな部分でちょっと色出したい、変なスイッチしたいとか思っちゃうけど多分やっちゃ駄目なやつだ。でもマクミランスイッチとか、いつもなら微妙な感じのスイッチとかもいけちゃわないですかね。
Card to Any Location
観客のカードを色々な場所に出現させるにあたってのアイディア。
事前に仕込んだ場所にカードを出現させるときに、マシューが使っている「消失」方法のアイディア。画期的なものではなく、この手法を好んで使ってるよっていう紹介。ある程度カードマジックをしていれば知っているはず方法。そういったトリックを演じる際に使う候補としてどうぞって感じ。
Mini Me
1巻に収録されてた「SHRINKAGE」と同現象だけど、ラブ・ア・ダブ・ダブを使う。
ジョシュア・ジェイのDVD『トーク・アバウト・トリックス』で解説されていたBruce KinseyのRub a Dub Subtletyも相性が良さそう。出現させるミニカードを保持した状態で手を広げるサトルティ/ハンドリングのおかげで楽になりそうで。
トーク・アバウトはだいぶ昔に観ただけなので、わたしが覚えていないだけでハンドリング被っている可能性あるけど、そのときは許してほしい。
Mini Me Variations
ラブ・ア・ダブ・バニッシュのムーブを使ったカラーチェンジの解説。
みんなやってそうだけど、解説を見た記憶は確かにあまり無いような。これが少し頭おかしくなってくると、パームトス(ジャメ・シャディエのDVD『フレンチ・コネクション』参照)やり始めるんだと思う。
Card Out of Wallet
バルドウィッチ・ワレット(カップス・ワレット)をロードの目的だけではなく、ワレットに仕舞ったカードを密かにスチールする目的で使っているのが面白かった。
個人的にはトランスポジションよりも、ミステリーカード系の現象で使うのが効果的なのではと思いました。ロマン・ガルシアの「The enigma of the chicken and the egg」に取り入れたら演じやすくなるような気がしました。
ただ原案は、ピックポケット後などの状況下で「スリ」の演出で演じているので気にならないけど、それ以外の文脈で使うとワレットにわざわざカードを仕舞う動作が冗長に感じるかもしれないので、上手く考えて取り入れたいですね。
あとハンドリングの都合上、ジャケットの内ポケットがないと演じれないので注意。
Card to Mouth
アンビシャス・カードのピースとしてよく見かける現象を上手く手順にしていて面白い。テーブルがない場所でもカード・アンダー・ザ・グラスのような現象をしたいという考えから生まれてるそうな。
スタンディングの状況下でサクッと演じれ、お客さんの印象に強く残ることも間違いない。あと、スタンディングでも~とは言っているけど、普通にテーブル前に座ってる状況下でも特に問題なく演じれそう。手の届くくらいの位置にお客さんはいてほしいとは思いますが。
vol.1の「CARDS TO POCKET」といい、ほんといい具合に手順組みますね。テーブル・ホッピングを得意としているだけあります。
The Time Machine
パーム・オフのように感じそうだけど、ミステリーカード現象。
ちなみに実演無しで解説のみ。マジック・キャッスル出演時に演じた手順とのこと。
1枚ミステリーカードをデックの中にひっくり返しておきます。からのそれじゃあ1枚選んでください、サインもしましょう。なので、正直この辺りの流れは好きじゃない。ミステリーカードはずっと出しておくなり、サイン後に出すなりしておかないと観客が混乱する(というかわたしは混乱して、そういえばそんなこと言ってたわーわかりづれぇーと)。少なくともその戦略を取るなら、広げた状態で取らせるなりしないと駄目でしょ。
あと、サインした後に4枚のカードの間に入れるのにも関わらず、一旦デックに戻して抜き出すのもちょっと良くない。マシューはテーブル・ホッピング特化ということで、サインはデックの上でしてもらってそのまま~であれば理解できるのだけど、このトリックは実演映像がないのでジャッジしづらい。
まぁここは駄目って感じた部分は全部、ダーウィン・オーティスの原案「サイコロジニスト・カード」そのまんまらしいけども。
ちょっと原案者の演技を見てみないといけませんね。一般客相手に演じてる映像が無いのはその辺りの理由かね?と邪推してみたり。マシューであればこの辺りもいい具合に変えそうだけど残したんですね。
オーティスの原案は別裏のデックが必要であり、テーブル・ホッピングという環境上無駄にデック使うなどを避けるために、使用する別裏をダブルブランクカードに変更、導入周りのアディションなどをカードに合わせて最適化したのがマシューの工夫。
99%くらいは名作なんだけど、1%(オーティス起因)が致命傷になってる感じ。巷に溢れてるパームオフの方がよっぽど良い。
Birthday Card Prediction
名前は原案のドク・イーソンの手順から。観客のサインカードの裏に「ハッピー・バースデー」などのメッセージを残せるので覚えておくと便利。
実演映像では「こういうツッコミされないのか?」とマジシャンが危惧するツッコミが行われており、割と強引に進行していたのが印象に残った。
カードにサインを頼んだら、カードを取ってテーブルで書こうとする(マジシャンはデックの上でサインして欲しい状況)とか、「一番下を見せろ!」「二枚目が怪しい見せろ!」みたいなツッコミなどなど。
個人的には、前者のケースの対策として「テーブルがある場所でデックの上でサインを求めない」「リチャード・サンダースのMarked Triumphみたいな策略を使う」、後者のようなケースには対人環境ではクリティカルなタイミングが短い技法を心がける(ダブルのまま持ち続けるよりもトップチェンジしておく。みたいな)とかなのかなぁと思ったり。
Elmsley Count
エルムズレイ・カウントの解説。
Rub a Dub Vanish
ラブ・ア・ダブ・バニッシュの解説。
Classic Force
クラシック・フォースの解説。
Coin False Transfer
コインのトス・バニッシュの解説。
もっさんの『THE TOSS VANISH』と同じコンセプトです。
Watch Steal & Coin Thru Hand
観客に手伝ってもらうオーソドックスなワンコイン・ルーティン。
マッスル・パス、ストライキング・バニッシュ、スルー・ハンド、コインの変化、ウォッチ・スチールといった流れ。
ストライキング・バニッシュは本家デビッド・ウィリアムソンと多少見た目は異なっている。ほんのちょっとの差異であり、本家とどっちが良いかと言われても個人の趣味によるよ、程度のもの。ストライキング・バニッシュについてのことなら何でも知りたい!みたいな人はどうぞ。
スルー・ハンドの部分からウォッチ・スチールのための伏線になっていき、時計は金属バンド前提での解説。バンドが外れにくいときのための危機回避手段も解説してました。
ウォッチ・スチールについては疎いのでこれくらいしか言えません。