【レビュー】ビデオ・マインド 第1巻 by マックス・メイビン
総評的な
マックス・メイビン氏の全3巻からなるメンタル・マジックのDVDシリーズ。第1巻はPARLOR MENTALISM(パーラー・メンタリズム)というテーマで、サロン・パーラーで演じやすいトリックが集められています。
日本語では演じれないトリックがひとつあるもののどれも面白く、スライト的な難易度は低め。スライトを使うトリックは日本語では演じれないやつの中でしか使われないので、易しいと言っていい。まぁだからといって、テクニシャンの皆さまが簡単に演じれるかといったら無理かもしれない。
古くからある原理なんかを見事に活かしたトリックばかりなので、楽しめるDVDだと思います。
第2巻の記事
個別に
THE MOCKINGBIRD(モッキング・バード)
観客達が混ぜたデックの中から1枚だけを抜き出して覚え、ポケットに入れておいてもらう。
演者は選ばれたカードのメイト・カードを観客の心の声を聞きながら取り出します。
不可能な状況でのカード当て。
1枚のカードを当てるだけだけど、時間にして6分ほど使っている。観客に質問していくが、声には出さず心の中で答えてもらい、その答えを当てることで心を読んでいるかのように思わせる演出はさすがです。
セットが必要で連続で演じることは出来ないけど、使っているデック自体はレギュラーなので、演技後別のトリックを演じるのは可能。
ショーの中で、1つだけカードマジックを入れたいときなんかに良いのではないでしょうか。
AUTOME(オウトム)
ブックテスト。観客の開いたページの冒頭のワンセンテンスを心の中で読み上げてもらい、演者はその情景を絵にして当てます。
残念ながら日本語の本では演技不可。マックス・メイビン氏が見つけた、天然のフォース・ブックになっている、とあるベストセラー本を使う。日本語の本でも同じ様になっている物があるかもしれませんけども、見つけるのは大変でしょう。
ページを選ばせる手法(元は別のトリックで使われていた古い原理で、普通のブックテストでは使えない)や、本のフォース(マジシャンズ・チョイス、3つから1つを選ばせる)で使われている台詞回しなど、参考に出来ることはあるけど、当てるときの演出が一番参考になるじゃなかろうか。
単語を当てるんじゃなくて、観客が思い浮かべているイメージを当てる系の方が良いなと私は思っているのですが(もし演じるならば)、そういう演出が好きな人は、Harvey Bergの『ブックテスト最終兵器』とか、北原禎人の『HUMINT』に書かれているブックテストの演出や、John Archerの『the streets』(旅行のガイドブックを使ったブックテスト)とかが気に入りそうかなーと思ったり。
私はペガサス・ページしますけど。
DIVINE WRITE(ディバイン・ライト)
観客と演者がそれぞれ紙にカードを1枚書き、4つ折りにしておく。デックを取り出して1枚ずつカードを引くと、書かれたカード。
見た目は古典的なDo as I doっぽいが、紙に書くのはデックを取り出す前で、カードの選択もフェア。非常に不思議。
ただ、このトリック専用のギミック・デックが必要(自作出来る)で、単体の演技時間は4分半くらい。
個人的には、解説の中で語られているTIPS、使うペンについてや、選ばせる際の台詞についてなどが、大事なのに絶妙に伝わらない感じで好きです。
ZENVELOPES(ゼンベロープ)
10通の封筒を観客に混ぜてもらい、ペアを5組作ると、中にはESPカードが入っており、すべてペアになっている。
割と演じている人をよく見かける傑作トリック。
ただ、簡単に手に入る封筒は適していないものが多いので、わたしは厚紙で封筒を作って使っていました。
KUROTSUKE(クロツキ)
白4個、黒1個の碁石を袋に入れ、観客に見えないように1個ずつ握ってもらい、黒い碁石を持っている人を当てます。
数々のヴァリエーションが生み出された作品。
タイトルは本来「Kurotsuki」で、誤字って出したらそのまま普及してしまったとかそういうことらしい。何かの訳書を出すときに翻訳者さんが連絡したときにそう言ってました、という話をしていたのを聞いた覚えがあります。
サロンでもクロースアップでも演じれはするけど、クロースアップで演じるときは、考案者が想定しているパフォーマンスを発揮出来ないので、個人的には「あーーうん」って感じになる。気にしない人は気にしないのだろうけど、アンネマンの時代からすでに、こういった「演者が観客に近づくときの順序」についての考えはかなり重要視されてました。
クロースアップで演じるときは、Menny Lindenfeld(メニー・リンデンフェルド)の「Occultatum(オクルターツム)」の方が良いと思います。
MIND’S EYE DECK(マインド・アイ・デック)
40枚のシンボル・カードから、観客が選んだ1枚を読み取って当てる。
ESPカードに書かれているようなシンボルの40枚のカードで、すべて異なるシンボルになっていて単売もされています。
現在(2024年)でも手には入りますが、手に入らない場合でも、ブランク・フェイス・カードや名刺のようなカードに書いて自作も出来ます。
演技時間は2分半程度。ESPカードを使ったルーティンのクライマックスに使ったりすると、いい感じに締まりそうな気がします。